SNSマーケティング 18 min read

SNSマーケティング戦略の立て方|1枚で社内承認

SNSマーケティング戦略の立て方|1枚で社内承認

SNSマーケティングの戦略は、担当者の頭の中で描けていても、そのままでは社内を通りません。上司から「なぜその媒体なのか」「いつまでに何が起きるのか」を聞かれて答えに詰まり、差し戻される。戦略づくりでつまずく原因の多くは、考えが足りないことではなく、決めたことが1枚の紙になっていないことにあります。この記事では、目的・ターゲット・媒体・指標・体制・予算の6項目を、決める順番どおりに1枚へ落とす手順をまとめます。あわせて、社内の説明で必ず聞かれる4つのことと、予算を広告費・制作費・社内の人件費に分けて組み立てる方法を示します。株式会社FIZは、ホテル・エンタメ・観光・採用と、目的の異なる案件で設計から運用まで担ってきました。読み終える頃には、自社のSNSマーケティング戦略を1枚に書き出し、上司への説明に持っていける状態になります。

SNSマーケティング戦略とは|運用の前に決めることを1枚にまとめたもの

SNSマーケティング戦略とは、投稿を始める前に決めておくことを1枚にまとめたものです。決める項目は、目的・ターゲット・媒体・指標・体制・予算の6つです。この6つが書き込まれていれば、社内の誰が読んでも同じ判断ができる状態になります。

6項目は「決める順番」でつながる

戦略と運用の違い——「決めること」と「やること」

戦略と運用は、扱う時間帯が違います。戦略は始める前に決めることで、運用は決めたあとに続ける作業です。ここを分けないまま「戦略を持ってきて」と言われると、投稿計画表を作って提出することになります。

見る点 戦略(決めること) 運用(やること)
中身 目的・ターゲット・媒体・指標・体制・予算 企画・撮影・投稿・コメント対応・レポート
決める人 担当者が案を作り、上司か事業責任者が承認する 担当者または委託先
頻度 期の初めに1回、四半期ごとに見直す 毎週または毎日

左の列が空のまま右の列を見せると、「それで何が良くなるのか」を必ず聞かれます。

アカウント運用・広告・インフルエンサー施策という手法の選び分けは、SNSマーケティングとは?の記事に整理しています。本記事は、手法を選んだあとに決めたことを社内で通る形にする段を扱います。

1枚にまとめる6つの項目と、決める順番

6項目には決める順番があります。前の項目が次の項目を縛るため、順番を飛ばすとあとで書き直しになります。

  1. ステップ1 目的:事業のどの数字を、いつまでにどれだけ動かすか
  2. ステップ2 ターゲット:いつ・どこで・何をきっかけに見る人か
  3. ステップ3 媒体:選んだ媒体1つと、選んだ根拠の数字
  4. ステップ4 指標:最終の数字1つと、途中の数字2つ
  5. ステップ5 体制:担当者名・週に使う時間・承認を出す人
  6. ステップ6 予算:広告費・制作費・社内の人件費の3行と合計

縛りの関係は具体で見ると分かります。目的が「来店を増やす」なら、ターゲットは店舗の商圏に住む人に限られます。予約の導線を置けない媒体を選べば、予約件数は最終の数字にできません。週の投稿本数が決まれば必要な時間が出て、時間が出れば社内の人件費が計算できます。この依存があるため、6項目は横並びのチェック欄ではなく、1から6の順に縦へ並べた1枚にしてください。

1枚にする理由——承認を取るためと、担当が変わっても残すため

1枚にする理由は2つあります。決裁者が判断できる形にするためと、担当が変わったときに引き継げる形で残すためです。

決裁者が見たいのは投稿の内容ではありません。いくら出すと何がどれだけ動くのか、動かなかったときにどうするのかの3点で、いずれも目的・予算・指標の行にあります。決めた理由が紙に残っていないと、次の担当者は媒体選びからやり直します。先に手を動かしたい場合は投稿が止まっている状態から動かす手順をご覧ください。

目的とターゲットを決める|設計書の上半分

設計書の上半分は、目的とターゲットの2行です。この2行の粒度が、そのあとの4行すべての粒度を決めます。「認知拡大」「20代女性」と書けば、下の4行も同じだけ曖昧になります。

目的は事業の数字まで下ろす(「認知拡大」で止めない)

目的の行には、事業のどの数字を動かすのかを書きます。「認知拡大」「ブランディング」で止めると、動く数字が書かれていないため、いくら出すべきかを判断できません。下ろし方は、売上の会議で見ている数字から、SNSで動かすものを1つ選ぶことです。水準は他社の事例ではなく、自社の現状から置いてください。現状が測れていなければ、最初の3か月を測る期間として申請します。

SNSで置きがちな目的 事業の数字まで下ろした書き方
認知拡大 指名検索数を6か月で1.5倍にする
ファンづくり 再来店率を四半期で3ポイント上げる
集客 SNS経由の予約を月30件にする
採用強化 応募数を月10件にする
売上拡大 SNS経由の購入を月50件にする

目的が採用の場合は、測る数字が応募数に定まるため設計書が書きやすくなります。株式会社FIZも採用を目的にしたTikTokとInstagramの運用を担当しました。

1枚への記入例:目的=ナイトプール連動プランの稼働率を、8月の3週間で前年より上げる。

ターゲットは「20代女性」では設計書にならない

ターゲットの行に「20代女性」と書いても、媒体も表現も決まりません。年齢と性別は、投稿の中身を1つも縛らないためです。設計書で使えるのは、次の4つの欄です。

  1. いつ見るか:平日の通勤中か、休日の夜か
  2. どこで見るか:スマートフォンの縦画面か、大画面か
  3. 何をきっかけに見るか:友人の投稿か、検索か、おすすめ欄か
  4. 誰の言葉なら信じるか:企業の発信か、同世代の体験談か

4欄が埋まると媒体と表現が絞られます。「休日の夜に、友人の投稿から知る人」なら、企業アカウントの案内より第三者の投稿が向いています。

来場者の層が幅広い施設では、期ごとに1層ずつ扱う形にしてください。株式会社FIZは三井不動産のsequenceでのホテルイベントを担当しました。全来場者ではなく、イベントに反応する層に絞って組み立てた例です。

1枚への記入例:ターゲット=休日の夜にInstagramを見て、同世代の投稿から次の旅行先を決める層。

Z世代を狙うときに書き足す一行(当事者チームから見た注意点)

ターゲットがZ世代の場合、設計書に「誰が作った投稿なら見られるか」の一行を足してください。Z世代は企業が整えた発信よりも、同世代の実際の体験を手がかりにします。ここを空けると、承認の段階で表現が社内の感覚に寄り、ターゲットから遠ざかります。

この一行を先に決めたのが、株式会社FIZのホテルニューオータニ大阪でのナイトプール施策です。届ける役を担ったのはインフルエンサー56名で、内訳はInstagram側41名、TikTok側15名です。測る数字は、途中の数字にインプレッションとリーチ、最終の数字に連動プランの稼働率を置きました。

結果は、Instagram単体でインプレッションが830万、リーチが625万でした。3週間後には、連動プランの稼働率が大きく伸びています。稼働率を最終の数字に置いたから、起用する人数と層の組み方が決まりました。

媒体と指標を決める|何で届け、何で測るか

設計書の3行目と4行目は、媒体と指標です。媒体は1つに絞り、選んだ理由を数字で添えます。指標は最終の数字1つと途中の数字2つの形にすると、月次の報告がそのまま作れます。

媒体は1つに絞り、選んだ根拠を数字で添える

媒体の行には、選んだ1つと根拠の数字を書きます。複数を並べると、どれも本数が足りず、どれも判断できない状態になります。

根拠の数字には、狙う年代の利用率を使ってください。年代別の利用率の表はSNSマーケティングとは?の記事に置いてあるので、狙う年代の行を写して設計書に添えてください。書き方は、次の1文の形に収めると読みやすくなります。

> 狙う層は(年代・条件)で、その層の利用率が(数字)と最も高いため、(媒体)を選んだ。

指標は最終の数字を1つ、途中の数字を2つ

指標の行は3つの数字で構成します。最終の数字を1つ、そこに至る途中の数字を2つです。最終の数字だけでは月次の判断ができず、途中の数字だけでは事業への貢献を説明できません。

目的 最終の数字(1つ) 途中の数字(2つ)
来店・予約を増やす 予約件数 プロフィールからの遷移数/保存数
問い合わせを増やす 問い合わせ件数 動画の視聴完了率/遷移数
再来店を増やす 再来店率 投稿への反応の割合/コメント数
応募を増やす 応募数 応募ページの閲覧数/保存数
認知を広げる 指名検索数 リーチ数/保存数

途中の数字を2つに限るのは、報告の場で見る数字を固定するためです。先のニューオータニ大阪の施策も、インプレッションとリーチで届き方を見て、稼働率で投資を判断した形です。

指標に置いてはいけない数字と、その理由

最終の数字に置いてはいけないものが3つあります。投稿数、フォロワー数、いいね数です。いずれも運用の途中で見る数字で、事業の成果ではありません。

投稿数を置くと本数を満たすことが目的になり、フォロワー数は関係のない層を集めても達成できます。いいね数を置けば、反応しやすい内容に寄ります。

体制と予算を決める|承認の山場はここ

設計書の下半分は、体制と予算です。承認の場で最も突っ込まれるのはこの2行で、差し戻しもここで起きます。体制は「誰が・週に何時間・誰が承認するか」まで、予算は広告費・制作費・社内の人件費の3行に分けて書いてください。

予算は「3つの層」の合計になる

体制は「誰が・週に何時間・誰が承認するか」まで書く

体制の行に「マーケティング部で担当」と書くと、時間を出す人も承認を出す人も決まらず、実務が止まります。時間の見込みは作業量から出します。企画から分析までを社内だけで回すと、作業量は月20〜40時間ほどになります。

外部に任せた場合も、素材の提供と内容の確認で月に4〜5時間は社内に残り、撮影がある月はさらに増えます。任せられる範囲と残る作業の線引きはSNS運用代行の記事に整理しています。承認を出す人も1人に決めてください。部署全体の合議にすると、投稿が止まります。

1枚への記入例:体制=担当は◯◯(週5時間)、制作は外部、投稿内容の承認は◯◯部長。

予算は広告費・制作費・社内の人件費の3つに分ける

予算の行は、1つの金額ではなく3つの層に分けて書きます。広告費、制作費、社内の人件費です。月額いくらという1本の数字で出すと、金額の根拠を説明できません。

  • 広告費:配信枠を買う費用。出せばその日から届き、止めれば消える
  • 制作費:画像や動画を作る費用。本数と、撮影の有無で決まる
  • 社内の人件費:担当者の時間。請求書は来ないが、確実に発生している
予算の規模 広告費 制作費 社内の人件費 増えているのはどの層か
小さく始める 0円 ほぼ0円(社内で撮影) 月20〜40時間 社内の人件費だけ。金銭の支出はほぼない
外部に運用を任せる 0円 外注費の内訳に含む(追加なら月5万〜20万円) 月4〜5時間 制作費が中心。社内の時間は大きく減る
広告まで広げる 月25万円以上 月5万〜20万円 月4〜5時間 広告費が最も増え、制作費も本数分だけ増える

小さく始める段では支出がほとんど発生せず、社内の人件費だけが積み上がります。外部に任せる段に進むと、社内の時間が減る代わりに制作費が立ち上がります。広告まで広げる段では広告費が最大になり、そこに配信する素材の本数だけ制作費が乗ります。金額帯が上がるほど、増える層が下から上へ移っていきます。

範囲別の月額の内訳はSNS運用代行の相場の記事、制作費が本数で決まる仕組みは広告クリエイティブの記事にあります。

予算の下限——この金額を下回ると成立しない範囲がある

予算には、下回ると成立しない水準があります。広告を含める場合、広告費の実務上の下限は月25万円です。これは手数料の計算から逆算される金額です。

手数料は広告費の20%が目安で、最低手数料が月5万円程度に置かれていることがあります。広告費が月10万円なら手数料は2万円の計算ですが、最低額の5万円が請求され、実質の負担率は50%になります。計算の仕組みは広告運用代行の手数料の記事にあります。

下限に届かない場合は、設計書に次の3つのどれを取るかを書いてください。

  • 期間を絞る:毎月10万円ずつではなく、3か月分を1か月に集中させる
  • 広告を外す:広告費を0円に置き、制作と社内の時間だけで組む
  • 固定報酬の形を探す:月額の定額で受ける形なら、率の下限に縛られない

下限と選択肢を並べて書けば、予算不足で見送りにはなりません。決裁者は、金額を削るか時期をずらすかを選べます。

外部に任せる分の費用を設計書にどう書くか

外部に任せる分は、月額ではなく契約期間の総額で書いてください。月額だけでは、初期費用や契約期間の違いで比較が狂います。初期費用は0〜30万円程度が目安で、立ち上げの設計や競合の調査が含まれます。

書き方は「月額◯万円×◯か月+初期費用◯万円=総額◯万円」の形です。見積を取る前でも「月額◯万〜◯万円の幅で、6か月」と幅で書けば、あとで承認を取り直す手間が省けます。なお、戦略の設計だけを単独で任せられるかどうかは会社ごとに違います。対応範囲と費用は、問い合わせのときに確認してください。6項目をどう埋めるかから相談したい場合は、お問い合わせページをご覧ください。

上司への説明で聞かれる4つのことと、答え方

設計書が埋まったら、説明の場で聞かれることを先に想定します。聞かれるのはほぼ4つで、答えはいずれも6項目のどこかにあります。新しく答えを作らず、どの行を指すかだけ決めておいてください。

① なぜこの媒体なのか

確かめられているのは媒体の良し悪しではなく、選んだ過程に根拠があるかどうかです。ターゲットの行から媒体の行へつなぎ、その層の利用率の数字を挟みます。

答えの例:狙うのは休日の夜に旅行先を探す20代で、その年代の利用率が最も高い媒体を1つ選びました。

② いつまでに何が起きるのか

2つ目は時間軸の質問です。途中の数字は初月から動き、最終の数字は数か月後に動きます。広告なら当日から、投稿を積み上げる形なら3か月前後を見込んでください。

答えの例:リーチと保存数は初月から、予約件数は3か月目から見てください。判断は3か月後に行います。

③ うまくいかなかったらどうするのか(やめる条件と見直す時期)

3つ目は決裁者にとって最も重い質問です。止め方が決まっていない案に、金額は出せません。指標の行の下に「見直す時期」と「やめる条件」の2行を足してください。見直す時期は3か月後か四半期末に置きます。

答えの例:3か月後に途中の数字2つが動いていなければ、媒体を1つだけ変えて次の3か月で再度判断します。

④ 社内の誰の時間を使うのか

4つ目は、他部署に影響が出るかを確かめる質問です。答えには時間と人の名前を入れてください。「兼務で対応します」では、いつ止まるか分からないと判断されます。

答えの例:担当は私が週5時間、撮影のある月は8時間です。承認は部長に月2回お願いします。

SNSマーケティング戦略のよくある質問

戦略は誰が作るべきですか

案を作るのは担当者、承認するのは上司または事業責任者という分担が基本です。案を持たないまま会議で議論すると、6項目のうち目的だけが決まって終わります。たたき台を1枚作り、決裁者には承認と優先順位の判断だけを求めてください。

見直しはどのくらいの頻度で行いますか

指標は毎月見て、6項目の設計書は四半期ごとに見直す形が回しやすくなります。毎月書き換えると施策を積み上げる期間がなくなり、1年据え置くと媒体の状況が変わったときに対応が遅れます。見直すときは、媒体と体制のどちらか一方だけを変えてください。

戦略づくりから外部に任せられますか

任せられます。社内にSNSの知見がない場合、媒体・指標・体制の3行は外部と一緒に組むほうが早く進みます。ただし目的の行と予算の枠は、事業側の情報がないと置けないため社内で決めてください。依頼先を選ぶ基準は、実績の数字ではなく、その数字をどの目的から逆算したのかを語れるかどうかです。選び方はSNSマーケティング会社の選び方の記事にあります。

予算がほとんどない場合はどうすればよいですか

広告費を0円に置いて組み立ててください。この場合、実質の予算は社内の人件費です。設計書には「広告費0円、制作費0円、社内の人件費は週◯時間」と書き、時間の確保を承認事項にします。あわせて媒体を1つに絞り、続けられる本数に落としてください。週5本で1か月止まるより、週1本を続けるほうが積み上がります。

まとめ:SNSマーケティング戦略は「6項目が埋まった1枚」から

SNSマーケティング戦略の立て方について、要点を整理します。

  • 戦略は「決めること」、運用は「やること」。承認の場で要るのは設計書のほうです
  • 決める項目は目的・ターゲット・媒体・指標・体制・予算の6つ。前が次を縛るため順番を飛ばせない
  • 目的は事業の数字まで下ろす。ターゲットは、いつ・どこで・何をきっかけに見るかで書く
  • 指標は最終の数字1つと途中の数字2つ。投稿数・フォロワー数・いいね数は最終の数字にしない
  • 予算は広告費・制作費・社内の人件費の3層。金額帯が上がると、増える層が下から上へ移る
  • 聞かれるのは、媒体の根拠・時間軸・やめる条件・社内の時間の4つ。設計書の行を指して答える

まずは紙を1枚用意して、左端に目的から予算までの6項目を縦に書き出してみてください。埋まらない行が、いま決まっていないことです。

株式会社FIZは、Z世代に届くSNSマーケティング・インフルエンサー施策に強みを持つ会社です。インフルエンサー56名を起用したホテルニューオータニ大阪の施策では、830万インプレッションに届きました。ラウンドワン・HIS・三井不動産の支援も手がけています。設計書の6項目をどう埋めるかからご相談いただけます。ご連絡はお問い合わせページからお願いします。