動画広告には、成果を測る指標が2種類あります。視聴完了率やスキップ率のように「見られたか」を測るものと、問い合わせや購入のように「事業が動いたか」を測るものです。最後まで見られた動画が1件も売上を生まないこともあり、逆に、飛ばされた動画が申し込みを集めることもあります。どちらを主に見るかを決めないまま配信を始めると、改善の方向が定まりません。この記事ではまず、動画広告の運用代行に任せられる範囲を整理します。そのうえで、YouTube・TVer・SNSといった媒体と動画の尺の対応をまとめます。さらに2種類の指標の使い分けと、制作と運用を同じ会社に頼むかの判断基準を示します。株式会社FIZは、観光施設の映像制作と広告運用の両方を手がけてきました。読み終える頃には、出す媒体と尺が決まり、続行と中止を判断する指標を先に決められます。
動画広告の運用代行に任せられる範囲
動画広告の運用代行とは、動画を使った広告の配信を外部の会社に任せる仕組みです。任せられるのは、媒体の選定から配信の設定、入札の調整、改善、レポートまでです。動画そのものの制作は、契約に含む会社と含まない会社に分かれます。会社ごとの範囲は、配信だけを担う形、編集まで含む形、撮影から含む形の3つに分かれます。

配信側の業務——媒体選定・配信設計・入札調整・改善・レポート
配信側の業務は、動画を「どこに・誰に・どの課金の形で出すか」を決めて回し続けることです。内訳は次の5つです。
- 媒体選定:YouTube・TVer・SNSの動画面のうち、どこに出すかを決める
- 配信設計:届ける相手と、使う動画の尺の組み合わせを決める
- 入札と課金の調整:課金の形を選び、1回あたりの単価を調整する
- 改善:何秒の時点で離脱が起きたかを見て、素材と配信対象を入れ替える
- レポート:視聴の数字と成果の数字をまとめ、次に出す版を示す
静止画の広告と比べて増えるのは、課金の形の選択です。
| 課金の形 | 費用が発生する条件 | 向いている目的 |
|---|---|---|
| 表示課金 | 動画が画面に表示された回数 | 名前を広く知ってもらう |
| 再生課金 | 一定の秒数まで再生された回数 | 中身を見てもらう |
| 完全視聴課金 | 最後まで再生された回数 | 終盤のメッセージまで届ける |
目的を決めてから課金の形を選んでください。
制作側の業務——企画・撮影・編集
制作側の業務は、企画から絵コンテ、撮影、編集、媒体ごとの書き出しまでです。運用代行の契約に含まれる場合と、別の見積になる場合があります。素材の本数や差し替えの進め方は広告クリエイティブの記事にまとめています。
動画で見落とされやすいのは、出演者と音源の権利です。出演する人との契約には、使える期間と媒体の範囲が決まっています。音源も同じで、Webでの配信を含まない契約があります。
発注の段階で「いつまで、どの媒体で使えますか」を文章で確認してください。期間の切れた素材を配信し続けると、契約の違反になります。
自社に残る仕事——撮影の手配と表現の最終確認
任せた後も、自社の手元には次の作業が残ります。
- 撮影の手配:場所の使用許可、商品の実物、出演する社員の同意を用意する
- 表現の可否の判断:業種ごとの規制や、ブランドとして言えない表現を伝える
- 完成後の使い道の決定:自社サイトや店頭でも使うかを決める
動画は、静止画より直しにかかる費用が大きくなります。撮影が終わってから構成を変えると、撮り直しが必要になります。確認は絵コンテ・初稿・完成の3回に分け、構成は絵コンテの段階で決め切ってください。
媒体と尺の対応——どこに何秒の動画を出すか
出す媒体を決めると、作る動画の尺は自動的に絞られます。媒体ごとにスキップできるかどうかが違い、見る人の姿勢も違うためです。同じ1本を全媒体に流すと、どこかで必ず合わなくなります。

YouTube——スキップ可否で作るものが変わる
YouTubeの動画広告は、スキップできる枠とできない枠に分かれます。Google広告のヘルプでは、次の区分で案内されています(2026年9月時点)。
- スキップできる枠:再生から5秒でスキップできる。長さの上限はない
- スキップできない枠:7〜15秒の枠と、テレビ画面向けの16〜30秒の枠がある
- バンパー広告:5〜6秒でスキップできない枠。伝えられるのはひと言だけ
スキップできる枠では、最初の5秒に商品名と用件を入れてください。ここに社名のロゴアニメーションだけを置くと、用件が伝わる前に飛ばされます。
TVer・コネクテッドTV——最後まで流れる前提の設計
コネクテッドTVとは、インターネットにつないだテレビのことです。TVerのような配信サービスの広告は、番組の合間に最後まで流れます。音を出した状態で見られる枠です。
TVerは自社の入稿規定で、CMの尺を6秒から60秒の間で設定できるとしています(2026年9月時点)。スキップできない枠として案内されています。
この枠の特徴は、手元でクリックする動きが起きにくいことです。成果をクリックの数で測ると、実態より低く出ます。
測り方は先に決めてください。配信の前後で、社名や商品名で検索された数を比べます。
SNSの動画面——音声なしで理解できるか
SNSの動画面では、音が出ない状態で再生されることが多くあります。縦の画面いっぱいに表示され、指でスクロールしながら流し見されます。冒頭の1秒で止めてもらえなければ、次の投稿に送られます。
そのため、SNS向けの動画には字幕が要ります。音のない状態では、話している内容が伝わりません。Z世代に向ける配信では、冒頭1秒で何の動画かが分かる画面も用意してください。
音を消した状態で自社の動画を再生し、内容が分かるかを見てください。分からなければ、SNSの動画面には向きません。
媒体ごとの向き不向きはSNS広告運用代行の記事で整理しています。TikTokに絞るならTikTok広告運用代行の記事で費用の内訳を扱っています。
尺×媒体の対応表(6秒・15秒・30秒・60秒)
尺ごとに入る情報の量は決まっています。6秒に3つの用件を詰めることはできません。
| 尺 | 入れられる情報 | 合う媒体 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| 6秒 | 商品名とひと言だけ | YouTubeのバンパー広告、SNSの動画面 | 名前を覚えてもらう |
| 15秒 | 困りごとと解決をひと組 | YouTubeのスキップ不可枠、TVer、SNS | 何のための商品かを伝える |
| 30秒 | 使う場面を2つ並べる、または利用者の声を入れる | TVer、コネクテッドTV、YouTube | 納得してもらう |
| 60秒以上 | 手順や物語を通して見せる | YouTubeのスキップ可能枠、自社サイト | 検討を先に進めてもらう |
尺が長くなるほど、最後まで見る人の割合は下がります。60秒を選ぶのは、長く見てもらう理由がある場合だけです。使い方に手順がある商品、施設の広さを見せたい場合などが当てはまります。
この区分は各媒体の公式ヘルプで確認した2026年9月時点のものです。媒体側の規定は変わるため、出稿の前に最新の仕様を確かめてください。SNSの動画面は上限の幅が大きく、数分まで受け付ける媒体もあります。ただし推奨の尺は15秒前後を挙げる媒体が多くあります。
決める順番は、媒体・尺・中身です。先に媒体を1つ選び、使える尺を決めてから構成に入ってください。
1本を使い回すか、媒体ごとに作り分けるか
1本の動画を全媒体で使い回せるのは、縦横比と尺が揃うときだけです。冒頭の設計は媒体ごとに違うため、撮影は1回にまとめ、編集で媒体ごとに分けるのが現実的な形になります。
使い回しが成立する条件(縦横比・尺・冒頭の設計)
使い回しが成立するのは、次の3つが揃う場合です。
- 縦横比に耐える構図:横長と縦長の両方に切っても、見せたいものが画面に残る
- 切っても意味が通る構成:30秒版から15秒版を切り出しても、用件が消えない
- 音なしで分かる字幕:音を出す媒体と出さない媒体の両方で通じる
この3つは撮影の時点で決まります。見せたいものを画面の中央に寄せ、上下左右に余白を残して撮ってください。1回の撮影で横長と縦長の両方が取れます。端に文字や商品を置くと、縦に切ったときに消えます。
作り分けが要る場合と、その費用の考え方
作り分けが必要になるのは、媒体ごとに目的が違う場合です。TVerで名前を知ってもらい、SNSで申し込みを取る役割分担が当てはまります。目的が違えば、終盤の呼びかけも変わります。
必要な本数の考え方は広告クリエイティブの記事にあります。費用を抑える鍵は、撮影と編集を分けて考えることです。撮影の費用は日数と人数でほぼ決まり、編集の費用は書き出す本数で増えます。撮影日を媒体ごとに分けると、費用が一気に上がります。
見積を受け取るときは、次の3行に分けてもらってください。
| 見積の行 | 何で金額が決まるか |
|---|---|
| 撮影費 | 撮影の日数、出演者の人数、機材 |
| 編集費 | 完成させる動画の本数と尺 |
| 派生の書き出し費 | 縦横比や尺の違う版を何本出すか |
制作する側から見た「素材の設計」
制作の現場では、撮影の前に「どの尺の版を作るか」を決めます。決めずに撮ると、後から短い版を作れなくなります。長い版に必要なカットと、6秒版に使える1カットは、撮り方が違うためです。
株式会社FIZは、女満別空港エリアのプロモーションムービーを制作しました。ホテルニューオータニ幕張C&Cやエグゼクティブハウス禅のムービーも手がけています。こうした撮影では、季節と天候が撮れる中身を決めます。冬の景色は冬にしか撮れず、撮り直しができません。
そのため、撮影では想定より多めのカットを押さえます。使わないカットを残しておくと、後から短い版や差し替え版を作れます。
成果を測る2種類の指標を使い分ける
動画広告の指標は、「見られたか」を測るものと「事業が動いたか」を測るものに分かれます。どちらを主に見るかを1つ決めてから配信を始めてください。両方を同時に追うと、数字が食い違ったときに打つ手が決まりません。
見られたかの指標——視聴完了率・スキップ率・再生単価
視聴の側の指標は、動画がどれだけ見られたかを表します。主なものは4つです。
| 指標 | 何を表すか |
|---|---|
| 視聴完了率 | 最後まで再生された割合 |
| スキップ率 | 途中で飛ばされた割合 |
| 再生単価 | 1回の再生にかかった費用 |
| 視聴の離脱点 | 何秒の時点で視聴が止まったか |
この4つのうち、素材を直すのに使えるのは離脱点です。3秒の時点で半分が離脱していれば、直すのは冒頭です。20秒の時点で落ちているなら、直すのは中盤の展開です。離脱点を見ずに素材を全部入れ替えると、当たっていた冒頭まで捨てることになります。
事業が動いたかの指標——コンバージョン・ビュースルー
事業の側の指標は、動画を見た人が実際に動いたかを表します。こちらも主なものは3つです。
- コンバージョン:問い合わせ、資料請求、購入などの件数
- ビュースルーコンバージョン:動画を見たがクリックはせず、後から自分で訪れて申し込んだ件数
- 指名検索の増減:社名や商品名で検索された回数の変化
動画広告では、ビュースルーコンバージョンの扱いで数字が大きく変わります。動画を見てから何日以内の申し込みを数えるかで、件数が増減するためです。集計の期間を先に決め、各社の提示する数字を同じ期間で並べてください。
目的別にどちらを主にするか(認知/獲得)
主に見る指標は、広告の目的から決まります。
| 目的 | 主に見る指標 | 補助で見る指標 | 続行・中止の判断 |
|---|---|---|---|
| 名前を知ってもらう | 完全視聴の単価、届いた人数 | 指名検索の増減 | 同じ予算で届く人数が落ちたら素材を替える |
| 申し込みを増やす | 申し込み1件あたりの費用 | 視聴完了率 | 目標の単価を超え続けたら配信を止める |
定例の場で「今月の主指標はこれ」と1行書き、配信の期間中は変えないでください。途中で変えると、改善したのか設定を変えただけなのかが分からなくなります。
2つが食い違ったときの読み方
視聴の指標と事業の指標は、しばしば逆を向きます。組み合わせで読み方が決まります。
| 見られたか | 事業が動いたか | 起きていること | 次の手 |
|---|---|---|---|
| 高い | 低い | 見て楽しめたが、行動する理由が伝わっていない | 終盤の呼びかけと、遷移先のページを直す |
| 低い | 高い | 冒頭で用件が伝わり、必要な人だけが残っている | 素材は変えない。尺を短くして単価を下げる |
| 低い | 低い | 届ける相手か媒体が合っていない | 配信対象と媒体を入れ替える |
| 高い | 高い | 素材と配信先が合っている | 予算を増やし、同じ切り口の版を足す |
判断を誤りやすいのは、見られた割合が低いのに申し込みが取れている場合です。スキップ率の高さは失敗と扱われがちですが、飛ばした人は元から対象ではありません。直すのは素材ではなく、費用の使い方です。
費用と、依頼先に確認する4つのこと
動画広告の運用代行では、手数料そのものより制作費の扱いが総額を動かします。動画の制作費は静止画より大きく、月額の内訳で最も幅が出る項目です。確認は、手数料の形と制作費の線引きから始めてください。
運用手数料の形(広告費連動・固定+料率)
手数料の形は、広告費に対する割合で決まる形と、固定の費用に割合を足す形に分かれます。動画広告の運用代行を掲げる会社では、料金を公開している例もあります。ペタビットは自社のサービスページで、広告費の20%と示しています(2026年8月時点)。少額から始める場合は、固定費に33%を加える形も併記しています。
料金体系の型そのものや、広告費の下限の考え方は動画に限りません。全体像は広告運用代行の記事にまとめています。ここでは動画特有の4点に絞ります。
① 制作費は手数料に含まれるか
最初に確認するのは、動画の制作費が手数料の中か外かです。含む契約でも、本数と尺に上限が付いていることがあります。
聞き方は「その月額で、何秒の動画を何本まで作れますか」です。本数と尺の両方で答えられない見積は、比較に使えません。「制作込み」の文字だけでは、月1本なのか5本なのかが分かりません。
② 撮影から任せられるか、編集だけか
次に確認するのは、撮影を自社で行う会社かどうかです。編集だけを担う会社に撮影を頼むと、間に別の制作会社が入ります。連絡の経路が増え、修正の往復に日数がかかります。
手元に使える映像素材があるなら、編集だけで足ります。素材が無い場合や古い場合は撮影が必要です。「撮影は御社の人が行きますか」「何日分が含まれますか」の2つを聞いてください。
③ 制作と運用が同じチームか、別会社に回すか
動画広告で分かれ目になるのは、素材を直す速度です。配信の数字を見るのは運用の担当者で、素材を直すのは制作の担当者です。別の会社に分かれていると、離脱点の共有が月次のレポートまで待たされます。直す指示も自社を経由して二段階で伝わり、修正した版の配信開始は数週間後にずれます。
聞く質問は1つです。「離脱点を見てから、直した版を配信するまでに何営業日かかりますか」。この日数が、動画広告の改善の速度になります。
④ レポートに次に何を変えるかが書かれるか
動画広告のレポートで見たいのは、視聴が落ちた位置です。再生回数と単価の一覧だけでは、次に何を変えるかが決まりません。
商談でレポートの見本を出してもらい、次の2つが載っているかを見てください。何秒の時点で視聴が落ちたかの推移と、次に出す版の指定です。この2つがあれば、翌月の打ち合わせが判断の場になります。
動画広告運用代行に関するよくある質問
動画広告の広告費はいくらから依頼できますか
広告費の下限の考え方は、動画でも静止画でも変わりません。最低手数料の金額で実質の下限が決まります。詳しくは広告運用代行の記事をご覧ください。
動画で違うのは、初月の負担です。素材が手元に無い場合、初月は制作費が広告費に近い金額になることがあります。予算は、制作の月と配信の月に分けて組んでください。
動画は自社で用意する必要がありますか
契約の内容によります。制作を含む会社に頼めば用意は不要で、含まない会社なら自社で用意します。
手元にある映像を使い回す道もあります。採用向けの動画や施設の紹介映像は、切り出して広告に使える場合があります。
既存のテレビCM素材を使えますか
権利の範囲が合っていれば使えます。出演者と音源の契約に、Webでの広告配信が含まれているかを確認してください。テレビ放送のみの契約では配信できません。
そのうえで組み替えるのは冒頭です。テレビCMは飛ばされない前提で作られ、雰囲気を作る数秒から始まる構成が多くあります。スキップできる枠では、用件が伝わる前に飛ばされます。冒頭だけを差し替えた版を1本作ってください。
動画広告は成果が出るまでどのくらいかかりますか
2種類の指標で、見えるまでの時間が違います。視聴の指標は、配信量が貯まれば数日で読めます。
事業の指標は時間がかかります。動画を見てから申し込むまでに間が空くためです。初月は視聴の指標で素材を絞り、翌月から事業の指標で判断する進め方が現実的です。
まとめ:媒体と尺を決め、主に見る指標を先に1つ決める
- 動画広告の運用代行に任せられるのは、媒体選定・配信設計・入札調整・改善・レポート。動画の制作は含む会社と含まない会社がある
- 決める順番は媒体・尺・中身。6秒はひと言、15秒は困りごとと解決、30秒は納得、60秒以上は手順や物語
- 使い回しは縦横比・尺・字幕の3条件が揃うときだけ成立する。撮影は1回にまとめ、編集で分ける
- 指標は「見られたか」と「事業が動いたか」の2系統。主に見るものを1つ決め、配信中は変えない
- 依頼先に聞くのは、制作費の扱い・撮影の対応・制作と運用の体制・レポートの中身の4点
まずは、出したい媒体を1つ選んでください。その媒体で使える尺に、今ある動画が収まるかを確かめるところから始められます。
株式会社FIZは、Z世代に届くSNSマーケティング・インフルエンサー施策に強みを持つ会社です。宿泊施設・観光地・自治体のプロモーションムービーを制作し、広告の配信運用も手がけてきました。制作と運用を同じチームで担当するため、視聴の数字を見て素材を直すまでの時間を短くできます。
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