訪日客に向けて広告を出したい。けれど、国内向けと同じ出し方でよいのか、どの国にどの媒体で出せばよいのか、いくら用意すればよいのかが分からない。そんな状態で、最初の一歩が決まらずにいませんか。
この記事でわかること
- インバウンド広告の種類9つと、旅行のどの段階で届くか
- 中国・韓国・台湾など、国・地域別に使う媒体
- 出し方の4ステップと、訪日客に絞る配信の設定
- 費用の内訳と、予算の決め方
- 注意点と、広告・プロモーションの事例
インバウンド広告とは
インバウンド広告とは、日本を訪れる外国人旅行者(訪日客)に向けた広告です。国と言語を指定して、旅行の前に自分の国にいる人へ、または日本に滞在中の人へ届けます。種類は、検索・SNS・動画など9つあります。
インバウンド広告の意味
インバウンド広告の目的は、店・施設・地域・商品を訪日客に知ってもらい、来訪・予約・購入につなげることです。ここでの「インバウンド」は、外から日本に入ってくる旅行、つまり訪日旅行のことです。
届ける相手は、大きく4つに分かれます。日本への旅行を考えている人、初めて日本に来る人、いま日本に滞在している人、また日本に来る人です。同じ訪日客でも、どの段階の人に出すかで、出す媒体と広告の中身が変わります。
「インバウンドマーケティング」は、名前が似ていますが別の手法です。記事などのコンテンツで見込み客に見つけてもらい、問い合わせを集める手法を指します。
インバウンドプロモーションとの違い
インバウンドプロモーションは、広告より広い言い方です。お金を払って広告枠に出す広告に加えて、インフルエンサーの起用と海外の旅行博への出展も含みます。海外の旅行会社やメディアを日本に招く取材旅行も、プロモーションの1つです。
広告は、狙う国・言語・年齢を指定して、すぐに多くの人へ届けられる手段です。プロモーションの手法は、発信者や旅行会社といった「人」を通して信頼を得る手段です。ここでは広告を中心に、プロモーションの手法も種類の中に入れて紹介します。
種類の早見表
| 種類 | 何に出すか | 届く段階 | 向いている目的 |
|---|---|---|---|
| 検索広告 | Google・百度・NAVER などの検索結果 | 旅行の前・滞在中 | 行き先や店を調べている人に選んでもらう |
| SNS広告 | Instagram・Facebook・TikTok・LINE など | 旅行の前 | まだ知らない人に知ってもらう |
| 動画広告 | YouTube・SNS の縦型動画 | 旅行の前 | 体験の様子を見せて、行きたい気持ちをつくる |
| ディスプレイ広告とリターゲティング | Web サイトやアプリの広告枠 | 旅行の前・帰国後 | 一度見た人に思い出してもらう |
| インフルエンサーの投稿を使った広告 | 発信者のアカウントと、その投稿を使った広告 | 旅行の前 | 信頼できる人の紹介として届ける |
| 予約サイト・旅行メディアの広告 | 予約サイトの広告枠・旅行メディアの記事 | 旅行の前 | 宿や体験を比べている人に選んでもらう |
| 滞在中の人に届く広告 | 日本の中の地域を指定した検索・SNS の広告 | 滞在中 | 近くにいる旅行者に来てもらう |
| 現地のマス広告と国内のオフライン広告 | 現地のテレビ・新聞・雑誌、空港・駅・ホテルの掲示 | 旅行の前・滞在中 | 広い層に名前を知ってもらう |
| 旅行博と招請旅行 | 海外の旅行博の会場、招いた旅行会社・メディア | 旅行の前 | 旅行会社やメディアに扱ってもらう |
インバウンド広告の市場とメリット
2025年の訪日客は4,268万人、使ったお金は9兆4,549億円で、どちらも過去最多です。旅行の前に役に立った情報源の1位と2位は SNS と動画サイトで、広告を出せる場所と重なっています。
訪日客の数と使うお金
日本政府観光局(JNTO)の推計値(2026年1月21日発表)では、2025年の訪日外客数は42,683,600人です。観光庁が2026年3月31日に発表した確報では、訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円です。
| 項目 | 2025年の値 | 出典(発表日) |
|---|---|---|
| 訪日外客数 | 42,683,600人 | 日本政府観光局(JNTO)(2026年1月21日・推計値) |
| 訪日外国人旅行消費額 | 9兆4,549億円 | 観光庁 インバウンド消費動向調査(2026年3月31日・確報) |
| 出発前に役に立った情報源:SNS | 43.3% | 観光庁 インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書(2026年3月発行) |
| 出発前に役に立った情報源:動画サイト | 39.6% | 同上 |
人数と使った金額の多い国・地域は、次のとおりです。
| 順位 | 人数の多い国・地域(JNTO) | 人数 | 金額の多い国・地域(観光庁) | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 韓国 | 9,459,600人 | 中国 | 2兆58億円 |
| 2 | 中国 | 9,096,300人 | 台湾 | 1兆2,033億円 |
| 3 | 台湾 | 6,763,400人 | 米国 | 1兆1,186億円 |
| 4 | 米国 | 3,306,800人 | 韓国 | 9,906億円 |
人数と金額で順位が入れ替わるため、広告を出す国は両方の数字で選びます。
情報源の割合は、出発前に役に立った情報源を、全国籍・地域の複数回答で聞いた結果です。SNS と動画サイトは、どちらも広告を出せる場所です。旅行先を考えている人が見ている場所に、そのまま広告を置けます。
インバウンド広告のメリット
インバウンド広告のメリットは、国内の客とは別の客層に、狙いを絞って早く届けられることです。主なメリットは次の5つです。
- 国・地域・言語で絞って届けられる:Meta の広告では、国は最大25、市区町村は最大250まで指定できます(Meta ビジネスヘルプセンター)。狙う国の人にだけ出せるので、広告費が狙っていない人に流れにくくなります
- 名前を知らない人に知ってもらえる:自社のアカウントのフォロワーがまだ少なくても、広告なら狙う国の人に表示できます。名前を知らない店や施設は、検索も予約もされません
- 少ない額から試せる:Meta の広告は、表示回数で課金される場合、ほとんどの広告主で1日1ドル以上から出せます(Meta のヘルプ)。いきなり大きな額を出さずに、国や素材を試せます
- 反応の数字が残る:表示・クリック・予約などの数字が国・素材ごとに残ります。次にどの国へ広げるか、どの素材を増やすかを、数字で決められます
- 見た人の投稿や口コミで広がる:観光庁の2025年の調査では、旅行の前に役に立った情報源に「自国の親族・知人」を挙げた人が19.9%いました。広告をきっかけに来た人の話が、その人の家族や知人の旅行先選びに使われます
観光庁の2025年の年次報告書では、訪日客のお金の使い道の上位は宿泊費(36.6%)と買物代(27.0%)です。飲食費(21.9%)が続きます。広告で呼んだ客の支出は、宿・店・飲食店を通じて地域にも落ちます。
業種ごとの使い方
業種によって、訪日客が選ぶ時期が違うため、主に使う広告も変わります。
| 業種 | 主に届ける段階 | よく使う広告 |
|---|---|---|
| ホテル・民泊 | 旅行の前 | 予約サイトの広告枠・検索広告・SNS広告 |
| 観光施設・体験 | 旅行の前 | SNS広告・動画広告・インフルエンサーの投稿を使った広告 |
| 小売店 | 旅行の前・滞在中 | SNS広告・滞在中の人に届く広告 |
| 飲食店 | 滞在中 | 滞在中の人に届く広告・検索広告 |
| 自治体・観光協会 | 旅行の前 | 動画広告・SNS広告・旅行博と招請旅行 |
宿は旅行の前に予約が決まり、飲食店は滞在中に「近くの店」として探されます。観光施設・体験・自治体は、行き先そのものとして選ばれる必要があります。そのため、旅行の計画より前に知ってもらう広告が中心です。
国内向けの広告との違い
国内向けの広告との違いは3つです。届ける相手が海外と日本の両方にいること、広告と行き先の言葉が違うこと、国ごとに使う媒体が違うことです。
旅行の段階ごとの届け先
訪日客は、旅行の前は自分の国にいて、滞在中は日本にいます。旅行の前の人には狙う国を指定して出し、滞在中の人には日本の中で出します。同じ「訪日客向け」でも、配信する地域の設定が逆になります。
| 段階 | 訪日客がいる場所 | していること | 届く広告 |
|---|---|---|---|
| 旅行の前 | 自分の国 | SNS や動画で行き先を知る。宿や体験を比べて予約する | SNS広告・動画広告・検索広告・インフルエンサーの投稿を使った広告・予約サイトの広告枠・現地のマス広告 |
| 滞在中 | 日本 | 地図で近くの店を探す。移動の途中で看板や掲示を見る | 検索広告・滞在中の人に届く広告・国内のオフライン広告 |
| 帰国後 | 自分の国 | 写真を投稿する。次の旅行を考える | ディスプレイ広告とリターゲティング・SNS広告 |
観光庁の2025年の年次報告書では、滞在中に役に立った情報の1位は交通手段(65.9%)でした。2位は飲食店(56.0%)です。滞在中の広告は、移動と食事を探している人に、行き方と場所が分かる形で出します。
言葉と文字
広告の文は、狙う国の人がふだん使う言葉で作ります。日本語の広告をそのまま出しても、日本語を読まない人には内容が伝わりません。
同じ中国語でも、中国本土は簡体字、台湾・香港は繁体字で書きます。中国語圏をまとめて1つの広告にすると、どちらかの人には読みにくい文になります。
広告の言葉と、押した先のページの言葉もそろえます。広告が英語なのに、押した先のページが日本語だけだと、押した人はそこで離れます。
国ごとの媒体
国によって、使われている検索エンジンも SNS もメッセージアプリも違います。中国本土では百度や WeChat、韓国では NAVER や KakaoTalk が使われています。日本と同じ媒体に出すだけでは届かない国があります。国ごとの媒体は、後の「国・地域別の広告の媒体」で一覧にします。
インバウンド広告の種類9つ
インバウンド広告の種類は9つです。ネットの広告が7つ、現地と国内の広告が1つ、人を招く・出向く手法が1つです。
検索広告
検索広告は、検索した言葉に合わせて、検索結果に出る広告です。リスティング広告とも呼びます。行き先・宿・店を自分で調べている人に出るため、行くかどうかを決める直前の人に届きます。
国によって、使われている検索エンジンが違います。Google のほか、中国本土では百度(Baidu)、韓国では NAVER に検索広告を出せます。旅行の前に海外で調べる人と、滞在中に日本で調べる人の両方に届く広告です。
SNS広告
SNS広告は、Instagram・Facebook・TikTok・YouTube・LINE などに出す広告です。国・年齢・興味関心で相手を絞り、投稿の合間に表示します。
まだ自社の名前を知らない人に、写真や動画で知ってもらう広告なので、旅行の前の認知に向いています。観光庁の調査でも、旅行の前に役に立った情報源の1位は SNS(43.3%)です。配信しながら商品を紹介して売る、ライブコマースという形もあります。
動画広告
動画広告は、YouTube や SNS の縦型動画の枠に出す動画の広告です。景色や料理、体験の流れを動きで見せられるため、写真よりも「そこで何ができるか」が伝わります。
旅行の前に役に立った情報源の2位は動画サイト(39.6%)でした(観光庁)。行き先を探している段階の人に、旅行の様子を思い描いてもらう広告です。
ディスプレイ広告とリターゲティング
ディスプレイ広告は、Web サイトやアプリの広告枠に出す画像や動画の広告です。検索していない人にも表示できます。
一度自社のサイトを見た人に、もう一度広告を出す使い方をリターゲティングと呼びます。旅行の前に比べていた人に思い出してもらうほか、帰国した人に次の旅行で再び来てもらうためにも使えます。クイズやゲームの形で、見た人が参加できる広告(インタラクティブ広告)もあります。
インフルエンサーの投稿を使った広告
インフルエンサーの起用は、狙う国のフォロワーを持つ発信者に、店や施設を紹介してもらう方法です。日本に住む外国人の発信者を起用する方法もあります。
その投稿を広告として配信すると、発信者のフォロワー以外にも届きます。Instagram と Facebook では、パートナーシップ広告という形で出せます。パートナーシップ広告は、発信者と自社の両方の名前が出る広告です。発信者が出した広告コードを、自社が広告マネージャに入れて配信します(Instagram ヘルプ)。
発信者を選ぶときは、フォロワーの数より、フォロワーがどの国に住み、投稿にどれだけ反応しているかを見ます。依頼する前に、フォロワーの国・地域の内訳を発信者から見せてもらいます。株式会社FIZが支援した訪日向けの起用は、後の「インバウンド広告・プロモーションの事例」で紹介します。
予約サイト・旅行メディアの広告
予約サイト・旅行メディアの広告は、訪日客が宿や体験を比べる場所に出す広告です。予約サイト(OTA)には、検索結果の上の方に宿を表示する広告枠を売っているところがあります。旅行メディアには、記事の形で紹介してもらうタイアップ広告があります。
どちらも、旅行先が決まり、宿や体験を比べている人に届きます。予約サイトに載せるだけでなく、広告枠で比べている人の目に先に入れる、という使い方です。
滞在中の人に届く広告
滞在中の人に届く広告は、日本にいる旅行者に、近くの店や施設を出す広告です。店や施設の周りの地域を指定して、検索広告や SNS広告を出します。
Google 広告の地域の設定「所在地」は、対象地域にいる人とよく訪れる人に出す設定です(Google 広告ヘルプ)。店の周りの地域を指定すると、その場所にいる人に届きます。ただし、地域の設定だけでは、その地域に住んでいる人と旅行者を分けられません。外国語の広告文にして、旅行者に読まれる広告にします。
現地のマス広告と国内のオフライン広告
現地のマス広告は、狙う国のテレビ・新聞・雑誌に出す広告です。広い層に一度に名前を知ってもらえますが、費用が大きく、反応を数字で追いにくい広告です。
国内のオフライン広告は、空港・駅・ホテルの館内の掲示やサイネージ、ポスター、チラシです。電車やバスなどの交通機関に出す交通広告もこの1つで、移動中の旅行者の目に入ります。
旅行博と招請旅行
旅行博は、海外で開かれる旅行の展示会に出展する方法です。招請旅行は、海外の旅行会社やメディアを日本に招き、現地を取材してもらう方法です。
どちらも、一般の旅行者より、旅行商品を作る旅行会社や、記事を書くメディアに扱ってもらうための手法です。費用と手間がかかるため、自治体や観光協会が地域ぐるみで行うことが多い方法です。
国・地域別の広告の媒体
中国本土は百度・WeChat・Weibo・小紅書・Douyin、韓国は NAVER と Kakao に広告を出します。そのほかの国・地域は、Google・Meta(Facebook・Instagram)・YouTube に出せます。台湾とタイは LINE にも出せます。
国・地域別の媒体一覧
| 国・地域 | 検索の広告 | SNS・動画の広告 | 使われているメッセージアプリ |
|---|---|---|---|
| 中国本土 | 百度 | WeChat・Weibo・小紅書・Douyin | |
| 韓国 | NAVER | Kakao・Instagram・YouTube | KakaoTalk |
| 台湾 | Facebook・Instagram・YouTube・LINE | LINE | |
| 香港 | Facebook・Instagram・YouTube | ||
| タイ | Facebook・TikTok・YouTube・LINE | LINE | |
| 東南アジアのほかの国 | Facebook・Instagram・TikTok・YouTube | WhatsApp(インドネシア・シンガポール)・Zalo(ベトナム) | |
| 欧米豪 | Facebook・Instagram・YouTube | WhatsApp(欧州) |
2026年10月27日時点の、各媒体の公式の広告のページの内容です。
中国向けの広告
中国本土に向けた広告は、中国の媒体に出します。検索は百度、SNS と動画は WeChat・Weibo・小紅書・Douyin です。
| 媒体 | 出せる広告(各社の公式の広告のページから) |
|---|---|
| 百度 | 検索広告・情報フィードの広告など(百度营销) |
| 友だちの投稿の合間に出る広告・公式アカウントの記事を使った広告(微信广告) | |
| 広告(決算で、広告とマーケティングの売上を公表している) | |
| 小紅書 | 検索と閲覧の両方の場面に出す広告(聚光) |
| Douyin | Douyin の運営グループの広告の窓口(巨量引擎) |
小紅書は、商品や行き先の口コミを探す場として使われています。検索と閲覧の両方に広告を出せるので、行き先を調べている人と、投稿を眺めている人の両方に届きます。
出稿の条件・窓口・審査は、媒体ごとに違います。出す前に、各媒体の広告の窓口で、日本の事業者が出せる条件を確かめてください。
韓国向けの広告
韓国に向けた広告は、検索は NAVER、メッセージアプリへの広告は Kakao が軸です。韓国では、メッセージに KakaoTalk が使われています。
NAVER は、検索広告の専用の窓口(네이버 검색광고)を公開しています。Kakao は、KakaoTalk などに広告を出す窓口(카카오비즈니스)を持っています。このほか、Instagram と YouTube にも広告を出せます。
台湾・香港向けの広告
台湾と香港に向けた広告は、Google・Facebook・Instagram・YouTube に出せます。検索も SNS も、日本で使っている広告の管理画面のまま、配信する国を変えて出せます。中国本土と韓国では、検索の広告に別の窓口が要る点が違います。
台湾では LINE が使われており、LINE にも広告を出せます(LINE Biz-Solutions 台湾)。香港では、メッセージに WhatsApp が使われています。文字は、どちらも繁体字で書きます。
東南アジア・欧米豪向けの広告
東南アジアと欧米豪に向けた広告も、Google・Meta・YouTube に出せます。タイでは LINE が使われており、LINE にも広告を出せます(LINE for Business タイ)。東南アジアでは TikTok にも出せます。
欧米豪の旅行者に向けて、日本政府観光局(JNTO)は6つの言語でキャンペーンを発信しています。アジアに向けては10の市場の言語で発信しています。中身は、後の「インバウンド広告・プロモーションの事例」で紹介します。
口コミサイトは、広告を出す場所というより、広告で知った人が評価を確かめに来る場所です。口コミに返信できる状態にしておきます。
インバウンド広告の出し方
インバウンド広告は、4つのステップで出します。狙う国と旅行の段階を決める、媒体と届ける相手を選ぶ、その国の言葉で素材と行き先を作る、配信して測る、の順です。押した先のページを作ってから配信を始めます。

1. 狙う国と旅行の段階を決める
最初に、広告を出す国を1つか2つに決めます。国が決まると、出す媒体と、使う言葉が決まります。
決めるときは、訪日客の人数と使う金額の両方を見ます。2025年は、人数で4位の米国が、使った金額では3位でした(JNTO・観光庁)。自社にすでに来ている客の国も、店の予約の記録やサイトの国別の訪問数から確かめます。
あわせて、広告で増やしたい数字を先に決めます。予約の数、来店の数、サイトへの訪問の数のどれを増やすかで、旅行の前に出すか、滞在中に出すかが決まります。
2. 媒体と届ける相手を選ぶ
国と段階が決まったら、媒体を選びます。国ごとの媒体は「国・地域別の広告の媒体」の表で、段階ごとの広告は「旅行の段階ごとの届け先」の表で選べます。
- 旅行の前に知ってもらう:SNS広告・動画広告・インフルエンサーの投稿を使った広告
- 旅行の前に比べている人に選んでもらう:検索広告・予約サイトの広告枠
- 滞在中に来てもらう:検索広告・滞在中の人に届く広告
最初から全部に出さず、1つの国に1〜2つの媒体から始めます。
3. その国の言葉で素材と行き先を作る
広告の文と画像は、その国の言葉で作ります。機械翻訳のまま出さず、その言葉を母語とする人に読んでもらってから出します。料理名・地名・料金の書き方は、とくに間違いが起きやすい所です。
押した先のページも、その言葉で用意します。行き方・料金・営業時間・予約の方法・使える支払い方法が、そのページで分かるようにします。
広告で知った人は、次に店や施設の名前で調べます。そのとき、広告の外でも、行き方・料金・予約・支払いの情報が Web で見つかるようにしておきます。名前で調べても情報が無ければ、広告で興味を持った人もそこで止まります。多言語の Web サイトを検索で見つけてもらう仕組み(SEO)は、広告を止めたあとも残る受け皿になります。
4. 配信して測る
配信を始めたら、国・素材ごとに数字を比べます。見る数字は次のとおりです。
| 見る数字 | 分かること |
|---|---|
| 表示回数 | 狙う国の人に、どれだけ見られたか |
| クリック数 | 広告の中身に、どれだけ興味を持たれたか |
| 押した先での予約・問い合わせの数 | 広告が来訪・予約につながったか |
| 国別のサイトの訪問数 | 狙う国からの訪問が増えたか |
サイトの計測(Google アナリティクス)では、訪問した人の国を分けて見られます。反応の良い国と素材に予算を寄せ、反応の無い素材は差し替えます。
訪日客に絞る配信の設定
訪日客に絞る設定は、媒体の「地域」の指定が中心です。旅行の前の人には狙う国を、滞在中の人には日本の地域を指定します。
| 媒体 | 地域の設定でできること | 出どころ |
|---|---|---|
| Google 広告 | 「所在地やインタレスト」(初期の設定)は、対象地域にいる人・よく訪れる人・対象地域に関心を示した人に出す。「所在地」は、対象地域にいる人とよく訪れる人に出す | Google 広告ヘルプ「対象地域の設定」 |
| Meta 広告 | 国(最大25)・市区町村(最大250)などを指定する。広告は、その地域に住んでいる人や最近その地域にいた人など、その地域で過ごす人に出る。市区町村を選ぶと「広告に反応しそうな人にリーチを広げる」が初期で選ばれ、その地域への旅行に関心がある人にも広がる | Meta ビジネスヘルプセンター「広告の地域を選択する方法」 |
日本にいる旅行者だけに絞る選択肢は、どちらの媒体も地域の設定の説明に挙げていません。日本を指定すると、日本に住んでいる人にも広告が出ます。旅行者に近づけるには、広告の文をその国の言葉で作り、押した先のページもその言葉にします。
Meta で日本の市区町村を指定すると、「広告に反応しそうな人にリーチを広げる」が初期で選ばれています。このままだと、その地域への旅行に関心がある人にも広告が広がります。指定した地域の中だけに出したいときは、このチェックを外します。
どちらの媒体も、地域の指定は100%正確ではないと説明しています。配信の後は、国別の数字で、狙った国に出ているかを確かめてください。
インバウンド広告の費用と予算
インバウンド広告の費用は、広告費・素材と翻訳の費用・運用を任せる手数料の3つです。Google 広告と Meta 広告は、1日の予算を自分で決めて出す仕組みで、少ない額から始められます。
費用の内訳
| 費用 | 何にかかるか | 決まり方 |
|---|---|---|
| 広告費 | 媒体に払う、広告の表示やクリックの代金 | 1日の予算か、期間全体の予算を自分で決める |
| 素材と翻訳 | 広告の画像・動画・文、押した先のページの制作と翻訳 | 国と言語を1つ増やすごとに、作る素材と翻訳が増える |
| 運用の手数料 | 設定・素材の差し替え・報告を任せたときの代金 | 任せる範囲で変わる |
国を増やすと、広告費だけでなく、素材と翻訳の費用も国の数だけ増えます。中国本土と台湾に出すなら、同じ中国語でも簡体字と繁体字の2つを作ります。最初は国を絞り、素材と翻訳の費用を抑えます。
予算の決め方
予算は、1日の予算か、掲載する期間全体の通算予算で決めます。少ない額で国と素材を試し、反応のある国に広げる順で増やします。
| 媒体 | 最低の額と、予算の動き方 | 出どころ |
|---|---|---|
| Google 広告 | キャンペーンごとに1日の平均予算を決める。1日に使う額は最大で1日の平均予算の2倍、1か月では30.4倍までになる(ほとんどのキャンペーン) | Google 広告ヘルプ「1日の平均予算について」 |
| Meta 広告 | 表示回数で課金される場合、ほとんどの広告主で1日1ドル以上。始めるときは1日5ドル以上・7日以上をすすめている | Meta のヘルプ・Meta の料金のページ |
1回の表示やクリックの単価は、オークションで決まります。狙う国や時期で単価は変わるため、同じ予算でも届く人数は国ごとに違います。最初の予算は、国ごとの単価を測るためのお金として組みます。
運用を任せたときの費用
運用を任せたときの費用は、任せる範囲で変わります。素材の制作、翻訳、配信の設定、数字の報告と改善のうち、どこまでを任せるかを決めてから見積もりを取ります。
料金の一例として、株式会社FIZの Meta広告運用の目安は月額30万〜50万円以上で、この額は広告費を含みます。見積もりを比べるときは、広告費が料金に入っているかどうかを必ず確かめてください。広告費が別の見積もりと、含む見積もりでは、同じ月額でも中身が違います。
インバウンド広告の注意点
インバウンド広告の注意点は4つです。直訳と文化・宗教の違い、広告の後の受け入れの準備、国と媒体が増えたときの測りにくさ、個人情報の規制と媒体の審査です。
直訳と文化・宗教の違い
日本語の広告を直訳すると、意味は合っていても、その国の人には不自然な文になります。広告の文は、その言葉を母語とする人に確かめてから出します。
宗教と食の習慣に関わる表現は、とくに注意します。JNTO の推計では、2025年の訪日客はインドネシアが640,600人、マレーシアが636,600人でした。中東地域は257,200人です。ムスリム(イスラム教徒)が戒律の上で食べてよい食べ物を、ハラールと呼びます。料理の写真に豚肉やアルコールが写る広告を、ムスリムの多い国に出す前には、その国の出身者に確かめてください。
表現の確認を飛ばすと、広告が多くの人に届くぶん、ブランドを下げる表現も多くの人の目に入ります。出す前に確かめる人と手順を決めておきます。
広告の後の受け入れの準備
広告は、知ってもらう入口です。押した先で予約できない、来た店で支払えない、行き方が分からない、のどれかが残っていると、広告で来た人はそこで止まります。
広告の中身と、受け入れの準備をそろえてから配信します。たとえば「カード払いOK」と広告に書くなら、店の入口とレジに使える支払い方法を表示します。空港や駅の掲示で知った人が、スマートフォンで調べたときに情報が見つかることも、この準備に入ります。
国と媒体が増えたときの測りにくさ
国・媒体・言語が増えるほど、数字が細かく分かれ、どこで成果が出ているかが見えにくくなります。3つの国に3つの媒体で出すと、比べる組み合わせは9つになります。
最初は国を1つか2つに絞り、組み合わせの数を少なくして始めます。国ごとに予約や問い合わせまでの数字がそろってから、次の国を足します。
個人情報の規制と媒体の審査
配信する国には、その国の個人情報の決まりがあります。EU には GDPR(一般データ保護規則)があり、2018年5月25日に施行されました(個人情報保護委員会)。欧州に広告を出し、サイトで訪問した人の情報を集めるなら、GDPR に合った扱いが要るかを先に確かめてください。
広告は、配信の前に媒体の審査を通ります。Meta の広告は、作成や編集のあとに自動で審査に入り、ほとんどは24時間以内に終わります。審査は媒体ごとに基準が違うため、出す国の媒体の広告のポリシーを先に読みます。
インバウンド広告・プロモーションの事例
事例は、日本政府観光局(JNTO)のキャンペーン広告と、株式会社FIZが支援した訪日向けのプロモーション2件です。1件ずつ、何をしたかと、学べる点を紹介します。
日本政府観光局(JNTO)のキャンペーン
何をしたか:JNTO は、海外の一般の人に旅行先として日本を印象づける広告を、市場ごとに相手を分けて出しています。公式ページで紹介しているのは、次の2つのキャンペーンです。
| キャンペーン | 届ける相手 | 中身 | 言語・市場 |
|---|---|---|---|
| グローバルキャンペーン | 欧米豪の、まだ日本に来たことがないが、日本への旅行に関心がある人 | 統一のキャッチコピー「Welcome to Japan. Unforgettable.」とビジュアルを使ったデジタル広告。自然・アクティビティ・文化体験・食を、季節ごとの動画とウェブサイトで発信 | 6言語(英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語・アラビア語) |
| アジアキャンペーン | 東アジア・東南アジアの、これまでに日本に2〜5回程度来た人 | 「季節ごとに楽しむ日本」をテーマに、8エリア(北海道・東北・中部・関東・関西・瀬戸内・九州・沖縄)の季節の体験を、公共交通機関を使うモデルルートとともに発信。予約サイトと連携し、体験の予約ページに誘導 | 10市場向けの言語(中国・台湾・香港・韓国・タイ・ベトナム・シンガポール・マレーシア・インドネシア・フィリピン) |
出どころは、JNTO の公式ページ「訪日インバウンドの拡大を目的としたキャンペーン広告」です。
学べる点:日本に来たことがない人と、何度か来た人とで、広告の目的と中身を分けている点です。来たことがない人には日本そのものを印象づけ、何度か来た人には季節の体験とモデルルートで「比べて選ぶ」段階に進めています。アジア向けは、広告の行き先を体験の予約ページにつなげ、見た人が予約まで進める形にしています。
FIZ が支援した訪日向けのプロモーション2件
株式会社FIZは、Z世代に届くSNSマーケティング・インフルエンサー施策に強みを持つ会社です。訪日向けに支援したのは、広告ではなく、海外に届くインフルエンサーを起用したプロモーションです。
| 事例 | 年 | クライアント | したこと |
|---|---|---|---|
| UNIQLO SHINSAIBASHI 旗艦店オープンプロモーション | 2023 | 株式会社プラチナム | マスメディアで国内へ、SNS で海外へ発信。アジア圏の国へ訴求できるミドルインフルエンサー5名を起用 |
| 公益社団法人北海道観光振興機構 女満別空港エリアプロモーション | 2021 | 株式会社エイチ・アイ・エス | ターゲット国へ訴求できるクリエイティブからプロモーションまでを担当。Vivi さん(フォロワー36万人・2021年8月時点)を起用 |
UNIQLO SHINSAIBASHI の旗艦店のオープンでは、国内向けの発信をマスメディアに任せ、海外向けの発信を SNS に分けました。海外へは、アジア圏の国に届くミドルインフルエンサー5名が、それぞれのアカウントから発信しています。
女満別空港のエリアのプロモーションでは、Vivi さんが投稿した Instagram のリール動画が3.8万回再生されました。Google Analytics の分析では、目標の数字を大きく上回り、ターゲット国での認知の獲得につながっています。
学べる点:届けたい国を先に決めてから、その国のフォロワーを持つ発信者を選んでいる点です。こうした起用の投稿は、パートナーシップ広告にすると、発信者のフォロワーの外にも広げられます。
インバウンド広告のよくある質問
いつから配信を始めればよいですか?
旅行の計画を立てる時期に届くように始めます。宿や体験の予約が決まった後に広告を見ても、その旅行の行き先は変わりにくいためです。狙う国の連休・祝日・季節の行事の日付を、その国の暦で確かめ、そこから逆算して始めます。
JNTO のアジア向けのキャンペーンは、「季節ごとに楽しむ日本」をテーマに、季節の体験を季節ごとに発信しています。自社の広告も、桜・紅葉・雪など、訪日客が来る理由になる季節に合わせて素材を替えると、見る人の計画に合います。
英語の広告だけで足りますか?
英語だけでは足りません。JNTO の推計では、韓国・中国・台湾・香港の4つで、2025年の訪日客の約65%になります。この4つに届けるなら、韓国語と中国語(中国本土は簡体字、台湾・香港は繁体字)で作ります。
欧米豪に向けても、英語だけとは限りません。JNTO のグローバルキャンペーンは、英語を含む6つの言語で発信しています。最初は狙う国を1つ決め、その国の言葉の広告から始めます。
インフルエンサーの起用と広告は、どちらから始めればよいですか?
予算と目的で決めます。インフルエンサーの起用は、信頼できる人の紹介として、体験の中身まで伝えられます。広告は、狙う国・年齢を細かく指定して、届く人数を予算で決められます。
両方を組み合わせる形もあります。起用した発信者の投稿を、パートナーシップ広告として配信すると、紹介の信頼を保ったまま、フォロワーの外にも届けられます。行き先そのものを知ってもらう段階なら、起用から始めます。すでに名前が知られていて予約を増やしたい段階なら、検索広告から始める分け方もできます。
自社で出すか、任せるか、どう決めればよいですか?
社内に2つの役割を担える人がいれば、自社で始められます。狙う国の言葉で広告の文と押した先のページを作れる人と、毎週数字を見て素材や予算を直せる人です。
どちらかがいなければ、その部分を任せます。翻訳と素材だけを任せ、配信と数字は社内で見る、という分け方もできます。
まとめ
インバウンド広告は、狙う国と旅行の段階を決め、その国の媒体と言葉で出すと、訪日客に届きます。広告は知ってもらう入口なので、押した先のページと、名前で調べたときの情報まで用意してから配信してください。まずは国を1つ決め、少ない予算で素材を試すところから始めましょう。
株式会社FIZは、Z世代に届くSNSマーケティング・インフルエンサー施策に強みを持つ会社です。訪日向けには、海外のフォロワーを持つ発信者の起用を2件支援しました。Meta広告(Facebook と Instagram に出す広告)の運用も支援しています。目的と予算を伺い、合う施策の組み合わせをご提案します。
