店に訪日客が来るようになったけれど、メニューは日本語だけで、カードやスマートフォンでの支払いにも十分に対応できていない。インバウンド対策は、多言語、キャッシュレス、Wi-Fi、SNS とやることが多くあります。どこから手を付けるか、決められずにいませんか。
この記事でわかること
- インバウンド対策の一覧と、訪日客が実際に困っていること
- 多言語・接客・決済・Wi-Fi・食・免税の準備
- 準備したことを訪日客に伝える集客の対策
- 対策を進める順番
- 自社でできる対策と、頼む対策
自社で最初に整える準備と、それを訪日客に伝える場所を決められます。
インバウンド対策とは
インバウンド対策とは、日本を訪れる外国人旅行者(訪日客)を迎える準備と、集客をまとめた取り組みです。準備は言葉・支払い・通信・食・免税、集客は Web・Googleマップ・SNS で伝えることが中心です。
インバウンド対策の意味
「インバウンド」は、外から日本に入ってくる旅行、つまり訪日旅行のことです。インバウンド対策は、2つを合わせた言い方です。1つは、訪日客が店や施設で「注文できない・払えない・調べられない」で困らないための準備です。もう1つは、訪日客に知ってもらい選んでもらうための集客です。「外国人観光客対策」「訪日外国人対策」とも呼ばれ、1つ1つの取り組みは「インバウンド施策」と呼ばれることもあります。
似た言葉の「インバウンド集客」は、このうち知ってもらい、選んでもらう部分を指します。また、マーケティングの分野の「インバウンドマーケティング」は、訪日客の話とは別のものです。記事などで見込み客に見つけてもらい、問い合わせを集める手法を指します。
対策の一覧【早見表】
インバウンド対策の主なものは、次の8つです。上の6つが受け入れの準備、下の2つが集客の対策です。困った人の割合は、観光庁の令和7年度の調査で、旅行中に困ったこととしてその項目を選んだ人の割合です。
| 対策 | 何をするか | 関わる訪日客の困りごと | 困った人の割合 |
|---|---|---|---|
| 多言語の表示とメニュー | メニュー・入口・店内の案内を外国語にする | 多言語表示の少なさ・わかりにくさ | 10.9% |
| 外国語での接客と翻訳ツール | よく使う言葉の紙や翻訳アプリを用意する | 施設等のスタッフとのコミュニケーション | 15.4% |
| キャッシュレス決済 | カード・タッチ決済・スマートフォン決済に対応する | クレジット/デビットカードの利用 | 10.7% |
| 無料 Wi-Fi | 店の中で翻訳と地図を使えるようにする | — | — |
| 食と宗教への配慮 | 材料・アレルゲン・豚肉やアルコールの有無を表示する | — | — |
| 免税店の手続き | 2026年11月1日以降の販売に適用されるリファンド方式に対応する | — | — |
| Web とGoogleマップに情報を載せる | 整えた準備を、訪日客が来る前に見る場所に書く | — | — |
| SNS・口コミ・インフルエンサーで知ってもらう | 狙う国で使われている SNS で発信し、口コミに返信する | — | — |
「—」は、調査に当てはまる項目が無い対策です。受け入れの準備だけでは訪日客に知られず、集客だけでは来た人が注文や支払いで困って帰ります。言葉・支払い・通信を整えたら、その中身を Web とGoogleマップに載せて伝えるところまでが、1つの対策です。

インバウンド対策が要る理由
インバウンド対策が要る理由は、訪日客が過去最多まで増えている一方で、困ったまま旅行する人が多いからです。店や施設でのスタッフとの会話、表示、カードの利用に困った訪日客は、今もそれぞれ1割を超えています。困ったまま帰った人は、その店で使うはずだったお金を使わずに帰ります。
訪日客数と消費額
日本政府観光局(JNTO)の2026年1月21日発表の推計値では、2025年の訪日外客数は42,683,600人でした。2024年から15.8%増え、年間の過去最高を更新しています。訪日客が日本で使ったお金(訪日外国人旅行消費額)は9兆4,549億円で、2024年から16.4%増えました。観光庁の2025年の確報(2026年3月31日発表)の値です。
| 2025年の数字 | 値 | 2024年からの伸び | 出典(発表日) |
|---|---|---|---|
| 訪日外客数 | 42,683,600人 | 15.8%増 | 日本政府観光局(JNTO)(2026年1月21日・推計値) |
| 訪日外国人旅行消費額 | 9兆4,549億円 | 16.4%増 | 観光庁 インバウンド消費動向調査(2026年3月31日・確報) |
政府は2026年3月27日に閣議決定した観光立国推進基本計画で、目標を据え置いています。2030年に訪日客6,000万人、消費額15兆円という目標です。同じ計画は、訪日客が増えた理由として、コロナの収束後に訪日の需要が堅調なことと、航空便が回復したことを挙げています。国・地域では、韓国・中国・台湾・香港の4つで2025年の訪日客の約65%を占めます(JNTO)。
訪日客が旅行中に困ったこと
旅行中に困ったことの上位は、次のとおりです。観光庁が2026年4月28日に公表した「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」(令和7年度)の結果です。成田・羽田・関西・福岡・新千歳の5つの空港で、出国する前の訪日客4,110人に聞いています。
| 旅行中に困ったこと | 令和5年度 | 令和6年度 | 令和7年度 |
|---|---|---|---|
| ごみ箱の少なさ | 30.1% | 21.9% | 17.2% |
| 施設等のスタッフとのコミュニケーション | 22.5% | 15.2% | 15.4% |
| 観光地や地域の混雑 | — | 13.1% | 12.9% |
| 交通機関の利用 | 12.8% | 12.2% | 11.3% |
| 多言語表示の少なさ・わかりにくさ | 13.4% | 10.8% | 10.9% |
| クレジット/デビットカードの利用 | 7.0% | 7.8% | 10.7% |
| 入国手続き | 3.5% | 8.6% | 10.3% |
| 困ったことはなかった | 29.7% | 51.1% | 43.7% |
観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査を実施しました」(2026年4月28日)の表の抜粋で、全項目ではありません。複数回答です。「観光地や地域の混雑」は令和6年度に加わった項目です。
このうち、店や施設が自分の手で直せるのは「スタッフとのコミュニケーション」「多言語表示」「カードの利用」の3つです。困った場所を聞くと、3つとも飲食店が多く挙がっています。
- スタッフとのコミュニケーション:困った場所は飲食店が38%で最も多く、次が鉄道駅・バスターミナルの27%
- 多言語表示:困った場所は、都市部だけを訪れた人では鉄道駅の構内(30%)、地方部だけを訪れた人では飲食店(23%)が最も多い
- カードの利用:困った場所は飲食店が32%で最も多い
カードの利用に困った人は、令和5年度の7.0%から令和7年度の10.7%へ、2年続けて増えています。
インバウンド対策のメリット
インバウンド対策のメリットは2つです。訪日客がお金を使う宿泊・買い物・飲食の売上を取りこぼさなくなることと、来た人の発信が次の訪日客を呼ぶことです。
- お金を使う先が、宿泊・買い物・飲食に集まっている:観光庁の2025年の確報で、訪日客の消費額のうち宿泊費は36.6%、買物代は27.0%、飲食費は21.9%です。ホテル・小売店・飲食店の売上に、そのままつながる費目です
- 来た人の発信が、次の訪日客の情報源になる:観光庁の2025年の年次報告書では、旅行の前に役に立った情報源の1位は SNS(43.3%)でした。困らずに過ごせた訪日客の投稿や口コミが、次に来る人の判断材料になります
受け入れの準備
受け入れの準備は、来た訪日客が「注文できない・払えない・調べられない」で帰らないための準備です。観光庁の調査で困った人が多いのは、言葉と支払いです。
多言語の表示とメニュー
多言語の表示は、訪日客が店員に聞かなくても選んで注文できるようにする準備です。表示が少ない、わかりにくいことで困った場所は、地方部だけを訪れた人では飲食店(23%)が最も多くなっています。困った訪日客の57%は、翻訳アプリなどで自分で読み解いていました(観光庁 令和7年度)。
外国語に直す場所は、次の5つです。
- メニュー:料理の写真、価格、主な材料。写真があれば、言語が合わない人にも中身が伝わる
- 入口の表示:営業時間、使える支払い方法、予約が要るかどうか。入る前に分かれば、店の前で迷う人が減る
- 店内の案内:注文の仕方、会計の場所、トイレ、Wi-Fi の接続方法
- 紙のパンフレットと近くの地図:最寄り駅やバス停への行き方
- Web の予約フォーム:名前・人数・日時を外国語で入力できるようにする
あわせて、外国語の問い合わせをどこで受けるかを決めます。メールのほか、訪日客がふだん使うメッセージのアプリで受ける方法があります。
訳した文は、機械翻訳のままにせず、その言語を母語とする人に読んでもらい、料理名や料金に誤りが無いかを確かめます。
外国語での接客と翻訳ツール
外国語での接客は、全員が外国語を話せるようにすることではなく、よく使う場面の言葉を道具で補う準備です。スタッフとのコミュニケーションに困った場所は、飲食店が38%で最も多くなっています。困った訪日客の68%は、翻訳アプリなどの道具を使って話していました(観光庁 令和7年度)。訪日客も翻訳アプリを使っているので、店の側も同じ道具を用意すると話が通じやすくなります。
用意するものは、次の4つです。
- よく使う言葉の紙:あいさつ、人数の確認、注文、会計、お礼を、狙う国の言語で書いておく
- 指さしの紙:メニューやよく聞かれる質問を、日本語と外国語で並べる。指さすだけで会話ができる
- 翻訳アプリ・翻訳機:店頭の会話と、問い合わせの返信に使う。人を増やさずに外国語の対応を回せる
- スタッフの練習:よく来る国の言語で、最初のあいさつと会計の言葉だけを決めて練習する
料金・アレルギー・宗教に関わる話は、翻訳の結果だけで済ませず、紙の表示でも確かめられるようにしておきます。間違えたときに、取り返しがつかない話だからです。
キャッシュレス決済
キャッシュレス決済は、訪日客がふだん使っている方法で払えるようにする準備です。「クレジット/デビットカードの利用」で困った人は、令和5年度の7.0%から令和7年度の10.7%に増えています。困った場所は飲食店が32%で最も多くなっています(観光庁 令和7年度)。
同じ調査で、旅行中のどこかの都市でカードの利用を「便利」と感じた人は91%いました。便利だった理由の最多は「利用可能な場所が多かった」(81%)です。訪日客は、日本ではカードが使える店が多いと感じながら旅行しています。
対応する支払い方法は、狙う国・地域で選びます。
- クレジットカード・デビットカード:まず対応する
- カードやスマートフォンをかざすタッチ決済:端末を選ぶときに、対応しているかを確かめる
- 中国本土の旅行者向けのスマートフォン決済:WeChat Pay・Alipay など
使える支払い方法は、入口とレジの両方に表示してください。入る前に分かれば、払えないと思って入らない人も、入ってから払えないと分かる人も減ります。導入の前には、決済サービスごとの手数料と入金の時期を確かめます。
無料 Wi-Fi
無料 Wi-Fi は、訪日客が店の中で翻訳アプリや地図を使えるようにする準備です。日本滞在中に役に立った旅行情報に、無料 Wi-Fi を挙げた人は15.3%です(観光庁 2025年の年次報告書)。観光庁の令和7年度の調査では、どこかの都市で無料 Wi-Fi を「便利」と感じた人が80%いました。理由の最多は「利用可能な場所が多かった」(76%)です。
店に置くときは、次の3点を決めます。
- つなぎ方を外国語で書く:ネットワーク名とパスワードを、入口か席に英語でも表示する
- 登録の手間を減らす:最初の画面や同意の画面がある場合は、外国語の案内を入れる
- 共通のマークを使う:観光庁がつくった共通のシンボルマーク「Japan. Free Wi-Fi」は、無料で使えて、訪日客が簡単に使え、最初の画面や同意の画面に多言語の案内がある Wi-Fi なら、どなたでも申請できます(観光庁 共通シンボルマーク)
食と宗教への配慮
食と宗教への配慮は、食べられない材料がある訪日客が、自分で選べるようにする準備です。宗教の戒律・アレルギー・食べ方の考え方によって、避けたい材料は人によって違います。
メニューに書いておくことは、次のとおりです。
- 主な材料:とくに、だしや調味料に入っているものも書く
- 豚肉・牛肉・アルコールを使っているか:イスラム教の戒律では、豚肉とアルコールを避ける人がいる
- 主なアレルゲン:卵・乳・小麦・えび・かに・そば・落花生など
- 肉・魚を使っていない料理:ベジタリアン・ヴィーガンの人が選べる印を付ける
ハラールは、イスラム教の戒律で口にしてよいとされる食べ物のことです。ハラールに対応しない店でも、豚肉やアルコールを使っているかを書いておけば、訪日客が自分で判断できます。分からないことは「分からない」と表示し、推測で「使っていない」と書かないでください。
免税店の手続き
免税店(輸出物品販売場)で2026年11月1日以降に行う販売は、リファンド方式の対象です。店は消費税を含めた価格で売ります。訪日客が出国するときに税関で持ち出しの確認を受けた後、店が消費税にあたる額を返します(観光庁 消費税免税店サイト)。
制度の主な点は、次のとおりです。
- 販売日で決まる:リファンド方式は、2026年11月1日以降に店で行う販売から適用されます。出国日ではありません。それまでの方式と併せて使える移行の期間はありません(国税庁 Q&A 問8)
- 購入記録ごとに判定される:税関の確認は、購入記録1件ごとに行われます。1件の中の商品が1つでも確認できなければ、その記録の商品はすべて免税になりません
- 買える数量:免税で買えるのは、訪日客が出国のときに持って出られる数量までです
- 出国までの期間:訪日客は、購入日から90日以内の出国のときに、税関で確認を受ける必要があります。店はこのことを訪日客に伝えます
- 別送は廃止:免税で買った品物を郵便などで海外へ送る「別送」は、2025年3月31日で廃止されています
リファンド方式に移るときの免税店の許可の扱いは、次のとおりです。出どころは、国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し」と、そこに載る Q&A の問10です。
| 店の状況 | 定められていること |
|---|---|
| 2026年10月31日に許可を受けていた免税店 | 2026年11月1日に、新しい制度の許可を受けたものとみなされる。改めて申請書や届出書を出す必要はない |
| 2026年10月31日までに「輸出物品販売場における購入記録情報の提供方法等の届出書」を出していなかった免税店 | 2026年10月31日をもって許可の効力を失う |
| 免税の手続きの委託の有無や、購入記録の送り方を変える免税店 | 「輸出物品販売場等変更届出書」を出す |
| これから免税店の許可を受ける店 | リファンド方式での許可の申請は、2026年10月1日から受け付けられている |
観光庁は、免税店がまず、いま使っている承認送受信事業者に連絡するよう案内しています。承認送受信事業者は、購入記録を国税庁に送る手続きを受け持つ事業者です。自社のシステムで購入記録を送っている店は、訪日客へ直接返金するか、返金の手続きを委託する必要があります。
集客の対策
受け入れの準備をしても、訪日客が来る前に知らなければ、店は選ばれません。整えた準備(カードが使える・英語のメニューがある)を、訪日客が来る前に見る場所に書くことが、集客の対策の入口です。インバウンド対策のうちマーケティングにあたる集客も、この「伝える」から組み立てます。SNS で知った人が名前で調べたときに、支払い方法やメニューが分からなければ、来店の計画に進めないためです。
Web サイトの外国語のページ
Web サイトの外国語のページは、店の名前で調べた訪日客に、訪れる前に知りたいことを渡す場所です。SNS で知った人が名前で検索したときに、外国語で情報がまとまっていれば、そのまま来店や予約の計画に進めます。
外国語のページに書くことは、次のとおりです。
- 場所と行き方(最寄りの駅・バス停から)
- 営業時間と定休日
- 料金と、使える支払い方法(カード・タッチ決済・スマートフォン決済)
- メニューと、食の配慮(豚肉・アルコール・アレルゲンの表示があるか)
- 予約の方法と、予約できる言語
- 免税の手続きができるか
受け入れの準備で整えたことを、そのままこのページに書きます。準備が整っているのに Web に書いていなければ、訪日客から見れば無いのと同じです。ここに書いた情報は、ChatGPT や Google の AI が店について答えるときの材料にもなります。
Googleマップと口コミ
Googleマップは、滞在中の訪日客が近くの店を探し、行き方を確かめる場所です。店の情報は、Google が無料で提供する Googleビジネスプロフィールで載せられます。登録すると、店の情報が Googleマップと Google 検索に出ます。
整えるのは、次の4つです。
- 店の基本:住所・電話番号・Web サイト・営業時間と定休日。臨時休業もその都度載せる
- 支払い方法:Googleビジネスプロフィールの「属性」で、使える支払い方法を載せる
- 写真:入口・外観・料理や商品・メニュー。入口の写真があれば、地図を見ながら来た人が迷わない
- 口コミへの返信:外国語の口コミには、翻訳アプリを使ってでもその言語で返す
インバウンドの口コミ対策は、口コミへの返信が中心です。良い口コミにはお礼を、悪い口コミには何があったかの事実と、その後どう直したかを返します。口コミと返信は、Googleマップで店を探すほかの訪日客にも表示されます。
SNS とインフルエンサー
SNS は、訪日客に店や施設の存在を知ってもらう場所です。使われている SNS は国・地域で違うため、狙う国を決めてから、その国で使われている SNS を選びます。
自社のアカウントのフォロワーが少ない段階では、発信者(インフルエンサー)に紹介してもらう方法もあります。狙う国・地域で見られている人を選びます。訪日客に向けた起用で、株式会社FIZが支援した例は2件あります。
UNIQLO SHINSAIBASHI 旗艦店オープンプロモーション(2023年)では、アジア圏の国へ訴求できるミドルインフルエンサー5名を起用しました。マスメディアからの国内への発信と並べて、SNS から海外へ発信しています。公益社団法人北海道観光振興機構 女満別空港エリアプロモーション(2021年)では、フォロワー36万人(2021年8月時点)の Vivi さんを起用し、Instagram のリール動画は3.8万回再生されました。Google Analytics の分析で目標の数字を大きく上回り、ターゲット国での認知につながっています。
起用する発信者を選ぶときは、フォロワーの数より、フォロワーがどの国に住み、どの言語で見ているかを見てください。
広告・予約サイト・動画
広告・予約サイト・動画も、訪日客に知ってもらう集客の対策です。それぞれの役割は次のとおりです。
- 広告:国・地域と言語を指定して、狙う国の人にだけ店や施設を見せる
- 予約サイト・旅行サイト:訪日客が宿や体験を比べて予約する場所に、店や施設を載せる
- 動画:体験の様子を短い動画で見せ、行き先として選んでもらう
インバウンド対策の進め方
インバウンド対策は、次の4つのステップで進めます。この順番が、インバウンド戦略の骨組みです。
- 狙う国・地域と客を決める:国が決まると、言語・支払い方法・SNS が決まる
- 困りごとから受け入れを整える:会話・表示・支払いの順に、来た人が困る所を消す
- 整えたことを Web とGoogleマップに載せる:来る前に見る場所に、準備したことを書く
- 知ってもらい、数字で直す:SNS と口コミで知ってもらい、毎月同じ数字を見て直す

ステップ1 狙う国・地域と客を決める
はじめに、狙う国・地域を1〜2つに絞ります。国が決まると、メニューの言語、用意する支払い方法、発信する SNS が決まり、ほかの対策を選べるようになります。
決めるときに見るのは、次の3つです。
- いま来ている訪日客:どの国の人が、何人連れで、何時ごろ来ているか。店のスタッフに1週間だけ記録してもらうと分かる
- 自社の強み:訪日客に見せたい体験や商品は何か。外国語の口コミで、どの料理や体験が書かれているかを見ると手がかりになる
- 近くの店の対応:近くの店が、どの言語のメニューと支払い方法を用意しているか。Googleマップの写真と口コミで確かめられる
ステップ2 困りごとから受け入れを整える
受け入れの準備は、訪日客と同じ目で店を回り、困る所から整えます。観光庁の調査で、店や施設で直せる困りごとは次の順に多くなっています。スタッフとのコミュニケーション(15.4%)、多言語表示(10.9%)、カードの利用(10.7%)です。
確かめる方法は、次の2つです。
- 入口から会計まで歩いてみる:日本語が読めないつもりで、入口の表示・メニュー・注文・会計・Wi-Fi の順に見て、止まる所を書き出す
- 口コミと SNS の投稿を読む:Googleマップの外国語の口コミや、訪日客が店について書いた投稿を読み、何に困ったかを拾う
ステップ3 整えたことを Web とGoogleマップに載せる
ステップ2で整えた準備を、訪日客が来る前に見る場所に書きます。書く場所は、Web サイトの外国語のページと、Googleビジネスプロフィールです。
たとえば「英語のメニューがある」「カードとタッチ決済が使える」「豚肉を使っていない料理がある」と書きます。名前で調べた訪日客は、来る前に安心できます。書く中身は、受け入れの準備で整えたことと同じなので、新しく何かを作る必要はありません。
ステップ4 知ってもらい、数字で直す
最後に、SNS と口コミで知ってもらい、毎月同じ数字を見て直します。Googleビジネスプロフィールでは、閲覧数・ルート・ウェブサイトのクリック・通話数などを確かめられます。指標の名前は Google ビジネス プロフィール ヘルプ にあります。
見る数字は、次のとおりです。
| 見る場所 | 毎月見る数字 |
|---|---|
| Googleビジネスプロフィール | 閲覧数、ルート、ウェブサイトのクリック |
| Googleマップの口コミ | 外国語の口コミの数と、返信した数 |
| SNS | 投稿を見た人の数と、その国・地域の内訳 |
| 店 | 訪日客の来店の数(国別に記録する) |
閲覧数が増えているのにルートが増えないなら、写真や営業時間、支払い方法の書き方を直します。訪日客が来ているのに口コミが増えないなら、会計のときに口コミを頼む紙を外国語で用意します。数字が止まっている所から直します。
インバウンド対策の注意点
インバウンド対策で気を付けるのは、言葉が通じないことで起きる料金や注文の行き違いと、日本人の常連客への影響の2つです。
料金や注文の行き違い
言葉が通じない店では、料金や注文の内容の思い違いがクレームになることがあります。メニューに無い料金(席料・サービス料・お通し)や、量・辛さの思い違いが起きやすい所です。
防ぐ方法は、次の3つです。
- 料金を外国語でも書く:席料・サービス料・お通しがあるなら、金額とともにメニューに書く
- 税込みの価格で書く:日本では2021年4月1日から、消費者に示す価格は消費税を含めた総額で表示することになっています(財務省)。外国語のメニューも同じ価格で書く
- 注文を確かめる:注文を受けたら、メニューを指さして品目と数を確かめる。量や辛さは写真で見せる
常連客への影響
訪日客向けに価格や雰囲気を大きく変えると、日本人の常連客が離れることがあります。受け入れの準備は、日本の客の使い方を変えずに足す形で進めます。
- 日本語の表示を残す:外国語のメニューは、日本語のメニューに加える形にする
- 注文の方法を選べるようにする:大阪市の好事例集では、QR コードで注文する仕組みを入れた店が、高齢の客向けにタブレットも用意しています
- 常連客の声を比べる:訪日客への対策を始める前と後で、常連客の来店の数や声に変化が無いかを見る
インバウンド対策の事例
地域の事例は、京都市(2019年のキャッシュレス決済の調査)と大阪市(2024年度の多言語のセルフオーダー)の2つです。どちらも、受け入れの準備を地域でまとめて進めた例です。
京都市のキャッシュレス決済
何をしたか:公益社団法人京都市観光協会は、2019年の時点で、キャッシュレス決済の推進を主な事業の1つに掲げていました。キャッシュレス決済に取り組む観光の事業者への助成金の交付や、運営する売店での導入を進めました。
何が起きたか:観光協会が2019年2〜3月に、会員の889店舗に聞いた調査があります。土産店・宿泊施設・飲食店・文化観光施設などです。キャッシュレス決済を入れている店は83.8%でした。宿泊施設は93.1%、飲食店は90.8%です。入れた後に売上・収入が増えたと答えた店は33.4%でした。飲食店では47.4%、土産店では45.6%です(京都市観光協会 キャッシュレス決済実態調査・2019年8月9日発表)。
学べる点:支払い方法を増やすと、手持ちの現金に関わらず買えるようになります。2019年の調査では、飲食店と土産店で、売上・収入が増えたと答えた店の割合が高くなっていました。
大阪市の多言語のセルフオーダー
何をしたか:大阪市は2024年度、飲食店が訪日客の受け入れに使うデジタルの道具を入れる事業を行いました。道具は、セルフオーダー・順番待ちの受付・キャッシュレスです。その好事例を、好事例集にまとめています(大阪市「飲食店等における外国人観光客受入環境高度化事業『好事例集』」)。
何が起きたか:好事例集では、次のような店の声が紹介されています。
- お客がスマートフォンで QR コードを読み取ると、写真付きのメニューが多言語で出る仕組みを入れた店では、言葉で説明しきれなかった料理も選ばれるようになった。追加の注文が増え、客単価が上がった
- 同じ仕組みに、注文と同時にキャッシュレスで払える機能を合わせた店では、席の回転が上がった。来客の総数と総売上額が、ともに前年の同じ月を上回った
学べる点:多言語のメニューと、注文・会計の手間を減らす仕組みを、1つの道具でまとめて整えた点です。人手が足りない店でも、訪日客への対応を回せます。
自社でできる対策と、頼む対策
受け入れの準備は、多くを自社で始められます。集客の対策では、海外の SNS の運用、海外に届くインフルエンサーの起用、外国語の Web ページづくりを外に頼めます。社内に外国語や海外の SNS が分かる人がいないと、進めにくい所です。
| 対策 | 自社で始められること | 外の会社に頼むなら |
|---|---|---|
| 多言語の表示とメニュー | 写真と価格を付けたメニューを作り、翻訳アプリで訳す | 翻訳の会社に訳と確かめを頼む |
| 外国語での接客と翻訳ツール | よく使う言葉の紙と指さしの紙を作り、翻訳アプリを入れる | 翻訳機や多言語のセルフオーダーを、扱う会社から入れる |
| キャッシュレス決済 | 使える支払い方法を入口とレジに表示する | 決済サービスの会社と契約して端末を入れる |
| 無料 Wi-Fi | つなぎ方を英語でも表示する | 通信の会社に Wi-Fi の設置を頼む |
| 食と宗教への配慮 | メニューに材料・アレルゲン・豚肉やアルコールの有無を書く | 材料の確かめは自社で行う |
| 免税店の手続き | 2026年11月1日以降の販売に適用される方式を確かめる | 承認送受信事業者と、所轄の税務署に相談する |
| Web とGoogleマップに情報を載せる | Googleビジネスプロフィールを整え、口コミに返信する | 外国語の Web ページの制作を頼む |
| SNS・インフルエンサーで知ってもらう | 狙う国で使われている SNS に投稿する | SNS の運用と、海外に届くインフルエンサーの起用を頼む |
頼む先を選ぶときは、2つを確かめてください。訪日向けの実績を「何をして、どうなったか」で説明できるかと、毎月どの数字を測って報告するかです。
インバウンド対策のうち、株式会社FIZが受け持つのは集客の側です。インバウンド集客支援では、狙う訪日客の人物像と、知ってから選ぶまでの流れを描きます。そのうえで、SNS の運用・インフルエンサー施策・SEO・AI 検索への対策を1つの戦略で進めます。毎月の計測と報告まで行います。料金は貴社に合わせてお見積もりし、合う施策の組み合わせをご提案します。
インバウンド対策のよくある質問
どの業種にインバウンド対策が要りますか?
訪日客が来る店や施設なら、業種を問わず要ります。飲食店・ホテル・小売店・観光施設・交通などです。観光庁の令和7年度の調査では、困った場所で最も多いのは飲食店でした。スタッフとのコミュニケーションで38%、カードの利用で32%です。
訪日客の消費額は、宿泊費(36.6%)、買物代(27.0%)、飲食費(21.9%)の順に多くなっています。出どころは観光庁の2025年の確報です。ホテル・小売店・飲食店は、準備をすれば売上に直接つながる業種です。
中国からの訪日客には、どんな対策が要りますか?
中国本土からの訪日客には、支払い・SNS・言語の3つを合わせます。
- 支払い:WeChat Pay・Alipay などのスマートフォン決済
- SNS:中国本土では日本でふだん使う SNS がそのまま使えない場合があり、WeChat・Weibo・小紅書などが使われている
- 言語:中国本土は簡体字で書く。台湾・香港は繁体字
観光庁の2025年の確報では、国・地域別の消費額は中国が2兆58億円で最も多く、全体の21.2%でした。2025年の中国からの訪日客は9,096,300人で、年間では30.3%増えています。一方、2025年12月だけを見ると、前年の同じ月より45.3%減っています(JNTO)。1つの国・地域だけに頼らず、ほかの国の訪日客と日本の客にも来てもらえる形を残しておいてください。
インバウンド対策に使える補助金はありますか?
国・都道府県・市区町村に、インバウンド対策の費用を補助する制度があります。観光庁には、地域が一体で行う受け入れの準備を支援する事業があります(観光庁 観光地のインバウンド対応の支援)。令和8年度の当初予算の事業名は「オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業」です。
店ごとの準備を補助する市もあります。たとえば福井市は、外国人観光客が使う店舗などの準備の費用を、2分の1以内(上限10万円)で補助しています。対象は、外国語表記・食習慣への対応・無線 LAN・キャッシュレス決済・翻訳機・免税対応です。出どころは福井市外国人観光客受入環境整備事業(2026年5月1日更新)です。
補助の名前や金額、募集する時期は年度によって変わります。使う前に、観光庁のサイトと、店のある都道府県・市区町村の観光の担当課で、その年度に募集しているかを確かめてください。
まとめ
インバウンド対策は、訪日客が困っていることから受け入れの準備を整え、来る前に見る場所に書き、知ってもらう順に進めます。まずは狙う国を1つ決め、入口から会計までを訪日客の目で歩き、止まる所を1つずつ直してください。直した所は、その日のうちに Googleビジネスプロフィールにも書いておくと、来る前の訪日客に届きます。
株式会社FIZは、Z世代に届くSNSマーケティング・インフルエンサー施策に強みを持つ会社です。訪日客に向けては、海外に届くインフルエンサーの起用を、2件のプロモーションで支援しました。整えた準備を訪日客に伝える集客について相談したい方は、お気軽にご連絡ください。
