社内でSNSを運用しているが更新が続かない。成果も見えないまま、担当者の時間だけが減っていく。外注を考えたとき最初に浮かぶのは「どこまで任せられるのか」という疑問です。任せられる業務の一覧は見積の段階で示されますが、その裏返しである「自社に残る仕事」は見積書には載りません。実際には、素材の提供と投稿内容の確認が発注側に残ります。この記事ではまず、SNS運用代行に任せられる業務を整理します。そのうえで、完全に任せられるもの、自社の判断が要るもの、自社にしかできないものを3段階に分けます。さらに契約後の1カ月がどう進むかを工程表で示し、自社運用と費用をどう比べるかをまとめます。株式会社FIZは、自治体や商業施設のアカウント運用を手がけてきました。読み終える頃には、外注した場合に自社が使う時間の見込みが立ち、社内に説明できるようになります。
SNS運用代行とは|アカウントの運用業務を外部に任せること
SNS運用代行とは、企業のSNSアカウントを運営する業務を外部の会社や個人が代わりに行うサービスです。投稿を作って公開するだけでなく、方針の設計から数字の振り返りまでを含みます。
依頼できる6つの業務
依頼できる業務は、おおむね次の6つに分かれます。
| 業務 | 内容 |
|---|---|
| アカウントの設計 | 誰に何を届けるかを決め、プロフィールや世界観を整える |
| 投稿の企画 | 月間の投稿計画を立て、内容の案を出す |
| 制作 | 写真・動画・文章を作る |
| 投稿と運用 | 決まった頻度で公開し、公開後の反応を見る |
| コメント・メッセージ対応 | 寄せられた反応に返信する |
| 分析とレポート | 数字をまとめ、次の打ち手を提案する |
すべてを依頼する契約もあれば、企画と制作だけを頼む契約もあります。どこまでを含むかで金額が変わるため、見積の段階でこの6項目のどれが入っているかを確認してください。
見落とされやすいのはコメント・メッセージ対応です。投稿の代行に含まれていると思い込んでいると、公開後に届いた質問が放置されます。返信の有無は、アカウントの印象を大きく左右します。
「SNSマーケティング」との関係
SNS運用代行は、SNSマーケティング全体の一部です。SNSマーケティングには広告の配信やインフルエンサー施策も含まれます。運用代行が担当するのは、このうち自社アカウントの領域です。
全体像から整理したい場合はSNSマーケティングの記事を先に読むと、自社に必要なものが絞り込めます。媒体をTikTokに定めているならTikTok運用代行の記事が該当します。
丸投げできる範囲と、できない範囲
外注した後に「思ったより手がかかる」と感じる原因は、線引きが曖昧なまま契約することにあります。業務は3段階に分かれます。
完全に任せられる業務
次の業務は、任せたまま手を離せます。
- 投稿計画の作成
- 写真や動画の編集
- 投稿文の執筆
- 決まった時間での公開
- 数字の集計とレポート作成
これらは判断が要らず、決めた方針どおりに進む作業です。ここを社内で抱えているなら、外注の効果が最も大きく出ます。
作業量で見ると、この5つが運用時間の大半を占めます。企画を考える時間より、実際に手を動かす時間のほうが長いためです。社内の担当者が「忙しくて手が回らない」と言うとき、詰まっているのはたいていこの領域です。
自社の判断が要る業務
次の業務は、代行会社が案を作り、自社が判断します。
- 投稿内容の承認:表現やブランドの見え方が自社の基準に合っているか
- 新商品や催しの情報提供:何をいつ出してよいか
- 数字の解釈と次の方針:レポートを受けて、どこに寄せるかを決める
判断そのものは外に出せません。任せられるのは案を作るところまでです。
承認の担当者は1人に決めてください。複数人が別々の観点で意見を出すと、修正が往復して公開が遅れます。ブランドの表現に関わる基準は、最初に文書で渡しておくと確認の回数が減ります。
若い層に向けたアカウントでは、この基準づくりに注意が要ります。社内の感覚で「くだけすぎている」と直していくと、狙った層に届く言葉から離れていきます。何を守るべきかと、どこは任せるかを分けて決めておいてください。
自社にしかできない業務
次の業務は、外部が代われません。
- 商品やサービスの一次情報:現場でしか分からない使われ方や強み
- 撮影への協力:店舗や施設、働く人を撮る場合の手配
- 問い合わせ後の対応:SNS経由で来た相談に応対する
株式会社FIZが運用した東京都中央区観光商業まつりのInstagramアカウントも、この構造は同じでした。地域の催しでは、出店者や会場の情報を持っているのは主催側です。この情報が滞ると、投稿の中身も薄くなります。
外注を検討する段階で、社内の誰がこの一次情報を出せるかを決めておいてください。決まっていないと、契約後に情報の出し手を探すところから始まります。
契約後の1カ月はこう進む
契約後の流れが見えないと、社内の予定を組めません。多くの場合、1カ月は次のように進みます。
月次の工程表
| 時期 | 代行会社がやること | 自社がやること |
|---|---|---|
| 前月の下旬 | 翌月の投稿計画を作り、提出する | 計画を確認し、出せない情報や時期をずらす項目を伝える |
| 月初 | 承認された計画をもとに制作を始める | 撮影が必要なら日程と場所を押さえる |
| 上旬〜中旬 | 投稿案を提出する | 内容を確認し、修正点を返す |
| 中旬〜下旬 | 順次公開し、反応を見る | 寄せられた質問のうち、社内でしか答えられないものに回答する |
| 月末 | 数字をまとめ、レポートと次月の提案を出す | 定例で振り返り、翌月の方針を決める |
滞りやすいのは、投稿案の確認と、撮影の日程調整です。この2つが遅れると、公開の予定が後ろにずれます。
季節性のある商材では、この遅れが致命的になります。夏の催しの告知が7月末にずれ込めば、投稿としては成立していても集客には間に合いません。時期が決まっている情報は、前月の計画の段階で公開日を固定してください。
発注側が使う時間の目安
上の工程で発注側が使う時間は、定例のミーティングが月1回で1時間、投稿案の確認が月に数回で合計2〜3時間程度が目安です。撮影が入る月はこれに加えて半日から1日かかります。
つまり丸投げしても、月に4〜5時間は社内に残ります。この時間を確保できないまま契約すると、確認待ちで投稿が止まります。担当者を決めずに部署全体で見る体制にすると、承認が回らなくなりがちです。
確認の締め切りも決めておいてください。「提出から3営業日以内に返す」と取り決めておけば、公開の予定が崩れません。返答がない場合は承認とみなす、という運用にしている会社もあります。
自社運用と何が違うのか
自社でやるか外に出すかは、能力の差ではなく、続く仕組みがあるかどうかで決まります。
続く仕組みがあるかどうか
社内運用が止まる原因はほぼ共通しています。担当者が兼務で、繁忙期に手が回らなくなることです。止まった期間が長いほど、再開しても反応は戻りません。
外注の価値は、担当者の忙しさに左右されず投稿が続くことにあります。逆に言えば、社内に専任の担当者がいて毎月続けられているなら、外注の必要性は下がります。
もう1つの違いは、振り返りが行われるかどうかです。社内運用では投稿することが目的化しやすく、数字を見ないまま月が過ぎます。外注では毎月レポートが出るため、振り返りが仕組みとして入ります。
費用は「外注費 対 社内の人件費」で比べる
外注費だけを見ると高く感じます。比べるべきは、同じ業務を社内でやった場合にかかる人件費です。
企画・制作・投稿・分析を社内で回すと、月に20〜40時間程度の作業になります。この時間に担当者の時給を掛けた金額が、社内運用の実質的な費用です。外注費の相場は月10万〜50万円ですが、社内の人件費と並べると見え方が変わります。
株式会社FIZはSnsClubの集客マーケティングを手がけました。集客が目的なら、投じた費用に対する来店や申し込みの数で見ることになります。
費用の内訳や媒体別の相場はSNS運用代行の相場の記事で詳しく扱っています。
依頼先の3つの型
依頼先は大きく3つに分かれます。同じ「SNS運用代行」と名乗っていても、得意な領域が違います。
代行会社
企画から制作、運用、分析までを一貫して引き受ける形です。担当者が複数いるため、離脱があっても運用が止まりません。
一方で、費用は3つの型のなかで最も高くなります。契約期間も設定されていることが多く、短期の試用には向きません。
担当が複数いることには別の面もあります。窓口の担当者と実際に制作する人が分かれている場合、伝えた意図が届くまでに一段挟まります。商談では、日々のやり取りを誰とするのかを確認してください。
フリーランス
個人に依頼する形です。費用を抑えやすく、やり取りも直接なので反映が早くなります。
注意点は2つです。1つは、体調不良や他案件の繁忙で運用が止まるリスクがあること。もう1つは、得意な領域が人によって大きく違うことです。撮影ができる人、文章が得意な人、分析に強い人はそれぞれ別だと考えてください。
依頼する前に、これまで運用したアカウントを見せてもらうのが確実です。実物を見れば、得意な領域と表現の傾向が分かります。
制作会社
写真や動画の制作を主に担当する形です。素材の質は高くなりますが、日々の投稿や反応対応までは含まれないことがあります。
制作だけを外に出し、投稿と対応は社内で行う形は、社内に担当者がいる場合の現実的な選択肢です。
この形では、投稿の企画を誰が持つかを決めておく必要があります。制作会社は渡された企画を形にするのが役割で、何を出すかまでは踏み込まないことが多いためです。
どう選び分けるか
判断は、社内に担当者がいるかどうかで分かれます。予算の額から入ると、任せられる範囲と社内の体制が噛み合わないまま契約することになります。
| 社内の状況 | 向いている依頼先 |
|---|---|
| 担当者がいない、または兼務で時間が取れない | 代行会社。全工程を任せる |
| 担当者はいるが、制作の手が足りない | 制作会社かフリーランス |
| 予算を抑えて試したい | フリーランス。ただし止まるリスクを織り込む |
会社を選ぶ手順はSNSマーケティング会社の選び方に、Instagramに絞った候補の比較はインスタ運用代行の比較記事にまとめています。
SNS運用代行のよくある質問
どのくらいの期間で成果が出ますか
アカウント運用は積み上げ型のため、数カ月単位で見ます。最初の1〜2カ月は方針を固めて投稿の型を作る期間になり、数字が動き始めるのはその後です。
最初に見る数字は、フォロワー数より投稿への反応です。フォロワーは増えるまでに時間がかかりますが、反応の良し悪しは初月から差が出ます。ここを見ていれば、方針が合っているかを早い段階で判断できます。
投稿の内容は毎回確認が必要ですか
最初は毎回確認してください。数カ月続けて表現の基準が共有できたら、確認を減らす形に移行できます。最初から確認を省くと、ブランドの見え方がずれたまま積み上がります。
確認を減らすときは、対象を分けるのが安全です。定例の投稿は事後確認に切り替え、新商品や催しの告知だけ事前確認を残す形です。すべてを一度に手放すと、修正が必要な投稿が公開後に見つかります。
コメントやメッセージの対応も任せられますか
任せられますが、線引きが必要です。定型的な質問への返信は代行できても、商品の仕様や在庫、クレームに関わる内容は社内で答える必要があります。どこから社内に回すかを契約時に決めてください。
返信の速さも決めておくと安全です。翌営業日までに一次返答をする、といった目安があれば、対応の遅れによる印象の悪化を防げます。
途中で自社運用に戻せますか
戻せます。ただし、アカウントの権限が自社にあることと、これまでの投稿の意図や素材が引き継がれることが前提です。契約時に、終了時に何を渡してもらえるかを確認しておいてください。
引き継ぐ内容は3つあります。アカウントの管理権限、これまでに制作した素材の元データ、そして投稿の方針をまとめた資料です。3つ目が抜けると、戻した後に何を基準に作ればよいかが分からなくなります。
まとめ:SNS運用代行は「残る作業」を先に決めてから
- 依頼できるのは、設計・企画・制作・投稿・コメント対応・分析の6業務
- 完全に任せられるのは判断の要らない作業。承認と一次情報の提供は自社に残る
- 丸投げしても、月に4〜5時間は社内に残る。撮影がある月はさらに増える
- 自社運用と比べるときは、外注費と社内の人件費を並べる
- 依頼先は代行会社・フリーランス・制作会社の3つ。社内に担当者がいるかで選び分ける
まずは、自社で毎月どれだけの時間をSNSに使えるかを数えてみてください。この時間が確保できないなら、どの依頼先を選んでも同じところでつまずきます。
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