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観光・自治体のSNSマーケティング|進め方5ステップと事例

観光・自治体のSNSマーケティング|進め方5ステップと事例

観光や地域のSNSは、何から手を付ければよいのかが見えません。投稿は続けているのに来訪が増えたのか分からず、庁内から「効果は出ているのか」と聞かれると答えに詰まります。担当は1〜2名で、予算は年度で切れます。

この記事でわかること

  • 進め方の5つのステップ
  • 観光PRに使うSNSの選び方
  • 観光地・自治体のSNS発信の事例
  • 少ない人数と予算で届く範囲
  • 成果の報告に使う数字

自分の地域で年度内に何をやるかと、成果を何の数字で説明するかが決まります。

観光・自治体のSNSマーケティング5つのステップ

  1. 届け先を「域外」に決める(地域の外に住む人のうち、どこから・いつ・何をしに来てほしいか)
  2. 届け先に合わせて媒体を選ぶ
  3. 投稿の型を3つに絞り、素材をそろえる
  4. 届ける手を足す(広告の地域指定・発信者の起用・投稿したくなる仕掛け)
  5. 見る数字を決めて、報告の形にする

ステップ1を飛ばすと、残りの4つを決められません。誰に届けるかが空白のまま媒体を選ぶと、選んだ理由を説明できません。

観光のSNSと、単発の観光プロモーションは別物です。プロモーションは期間と予算が決まった1回の施策で、終われば止まります。SNSマーケティングは、その1回で得た素材と読者を次の年度に持ち越す形です。低い費用で始められること、写真や動画で見せられること、見た人の投稿が広がることは、どちらにも共通します。

ステップ1 届け先を「域外」に決める

届け先は、次の3つの問いに1行ずつ答えると決まります。

  1. どこから来てほしいか:都府県名と交通手段を書く(車で2時間の圏内、直行便のある都市など)
  2. いつ来てほしいか:埋めたい時期を月で書く(繁忙期ではなく、空いている時期を選ぶ)
  3. 何をしに来てほしいか:1つの体験に絞る(食・自然・催事のどれかを選び、並べない)

3つが埋まると、広告の配信範囲をその地域だけに絞れます。全国に薄く配るより、狙った地域で見られる回数が増えます。

地元で反応が良くても、来訪の数は動きません。自治体の公式アカウントは住民向けの広報と兼ねていることがあり、その場合は見ている人の大半が域内の住民になります。Instagramのインサイト、YouTubeアナリティクス、TikTokの分析画面には、閲覧者の地域が出ます。上位に並ぶ市区町村が自分の市町村と隣接自治体だけなら、届け先は域内で閉じています。

名前を知らない地域は、検索では探されません。先に画面に出て、名前を覚えてもらう順番になります。旅行の行動は、行く前・滞在中・帰ったあとの3つに分かれます。行く前は候補集め、滞在中は現地での投稿、帰ったあとは思い出の共有です。狙う相手をこの3つのどこに置くかで、作る投稿が変わります。

受け皿を持っているかどうかでも、設計が変わります。観光施設はチケットや予約の入口を持ち、予約の件数で判断できます。自治体や観光協会は入口も、宿の空室や交通の座席という在庫も持ちません。発信の役割を「行く理由を作るところまで」と決め、手配は事業者に渡します。受け入れの体制が整っていない時期に発信を強めると、来た人の不満に変わります。

地域の形でも、狙う相手は変わります。

  • 温泉地:1泊する理由を作る。宿の組合と足並みをそろえないと、特定の宿の宣伝に見える
  • 離島:航路と空路の便数が来訪の上限になる。定員を超える発信は、不満に変わる
  • 道の駅・街道沿いの施設:通過のついでに寄る場所なので、狙うのは車で1〜2時間の圏内
  • 複数市町村にまたがるDMO(地域の観光をまとめて進める法人):合意の相手が市町村の数だけ増える。取り上げる順番の基準を先に決める
  • 住民向け広報と兼ねているアカウント:投稿の半分が手続きの案内なら、観光の投稿は届きにくい。分けるか、曜日で役割を決める

届け先が国外なら、言語と予約の経路が変わります。現地の予約サイトに載っていない宿は、投稿を見ても手配できません。

ステップ2 媒体を選ぶ

媒体は、ステップ1で決めた相手の年代と、見せたいものの形で決めます。順番を逆にして「TikTokを始めるか」から入ると、誰に届けるかが後付けになります。

担当が1〜2名なら、媒体は1つか2つに絞ります。3つ以上を同じ本数で回すと、どれも更新が止まります。1つ目を主、2つ目を素材の使い回し先に置くと、作る手間が増えません。媒体ごとの年代別の利用率と観光での役割は、次の章にまとめています。

ステップ3 投稿の型を3つに絞る

投稿は3つの型に絞り、同じ形をくり返します。型が決まっていると、担当が代わっても同じ品質で続けられるためです。

型を決める前に、その地域にしかないものを1つ選びます。似た景色が他の地域にもあるなら、作り手や由来を添えて自分の地域の話にします。見せるものも、写真映えから体験の中身に移っています。何が見えるかより、そこで何ができるかを見せます。

型の例は次の3つです。

  1. 場所を見せる型:1か所を縦型の動画で30秒前後にまとめる
  2. 人を見せる型:作り手や店主に1つだけ質問し、答えを字幕で出す
  3. 予定を知らせる型:催事や見ごろの時期を、日付と地図つきで出す

どの型でも、画面の中に地名・季節・最寄り駅や駐車場からの所要時間を入れます。地名をハッシュタグだけに置くと、画面には出ません。訪れるときに必要な情報も、投稿か固定の場所にそろえます。アクセス、営業時間、料金、予約の方法の4つです。

素材は、見せ方の統一より先に量を作ります。色味や文字の位置をそろえるのは、撮りためたあとで決められます。写真だけの見栄えを追うと、実際に行った人との差が不満に変わります。加工で色を強めた写真は、同じ景色を見られなかった人の投稿に跳ね返ります。

ステップ4 届ける手を足す

投稿を出すだけで届く数には限りがあります。足す手は3つです。

足す手 何をするか 向いている場面
広告の地域指定 配信する地域・年代を絞って出す 来てほしい相手がはっきり決まっているとき
発信者の起用 その分野の発信者に現地で撮ってもらう 地域の名前がまだ知られていないとき
投稿したくなる仕掛け 合言葉・写真の募集・巡る企画を用意する 来た人がすでに一定数いるとき

広告は、配信先を市区町村の単位まで絞れます。全国に薄く配るより、同じ人に複数回届きます。

発信者の起用には、贈って投稿してもらう形、試してもらう形、費用を払って作ってもらう形があります。観光では、現地に来てもらう形が中心になります。日帰りで回れる範囲か、宿泊が要るかで、費用も日程も変わります。

投稿したくなる仕掛けは、来た人の投稿を増やす手です。合言葉を1つに決める、写真を募る、複数の場所を巡ると記念品が届く、といった形があります。見どころの投票やクイズのように、現地に行かなくても参加できる形もあります。来る前の人に向けた割引や限定の案内も、同じ枠に入ります。投稿が集まり始めたら、返信と紹介を続けます。返信の文面は3つほど決めておくと、担当が代わっても対応が揃います。

ステップ5 見る数字を決める

見る数字は、最後に決めるのではなく始める前に決めます。決まっていないと、続けるか止めるかを判断できないためです。

数字は2階建てにします。1階は最終的に達成したいこと、2階はそこに近づいているかを毎月見る数字です。観光では、1階に来訪や宿泊、2階に域外からの閲覧比率と、地名や催事名での検索数を置きます。2階の数字は毎月1行ずつ記録します。表計算1枚で足ります。

観光PRに使うSNSの選び方

媒体は、届けたい年代の利用率と、観光での役割で選びます。利用率は年代で大きく違い、同じ投稿を全媒体に出しても届く相手が変わります。

AIが旅程を提案する画面でも、元になるのは公開された文章です。公式サイトに地名・季節・所要時間を文字で置くと、引用される材料が増えます。画像の中だけに文字があると、読み取られません。

5つの媒体の比較

媒体 20代の利用率 全年代の利用率 観光での役割 向いている投稿
Instagram 82.6% 54.8% 候補として保存される 写真・縦型の短い動画・地図と所要時間
TikTok 61.5% 36.7% 知らない地域が見つかる 縦型の動画・音と動きのある景色
YouTube 96.3% 81.5% 行く前の下調べに使われる 数分の動画・季節ごとの見どころ
X(旧Twitter) 73.4% 44.7% 催事と当日の情報が流れる 開催の告知・運行や混雑の連絡
LINE 97.7% 92.9% 登録した人への連絡 登録者への案内・再来訪の呼びかけ

利用率の出典は、総務省情報通信政策研究所の調査報告書です。「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」で、公表は令和8年6月です。対象は13歳から79歳までの男女1,800人でした。調査の期間は令和7年12月1日から7日です(調査のページ)。

Instagram

Instagramで見られた投稿は、その場では行動になりません。あとで行き先を決めるときに見返されます。20代の利用率は82.6%で、全年代でも54.8%です。

3つの置き場所は、役割を分けます。

置き場所 役割 残るか
フィード 地名と見どころを1枚目で伝える 残る。プロフィールから後で見られる
ストーリーズ 当日の天気・混雑・開催の連絡を出す 24時間で消える。まとめれば残せる
リール まだ知らない人に見つけてもらう 残る。時間がたっても再生される

候補に入れてもらうには、保存される形が要ります。1枚目に地名を大きく置き、所要時間と季節を文字で入れます。

TikTok

TikTokでは、検索ではなく流れてくる動画の中で地域と出会います。名前を知られていない地域が候補に入る入口になります。20代の利用率は61.5%です。

向いているのは、音と動きのある景色です。風、水、火、乗り物の動きは短い動画で伝わります。逆に、文字の多い案内や長い説明は向きません。

YouTube

YouTubeは、行く前の下調べに使われます。20代の利用率は96.3%、全年代でも81.5%と、5媒体の中でLINEに次ぐ高さです。

数分の動画で、移動の経路や現地の様子をまとめて見せられます。1本撮ると、短い動画を複数本切り出せます。切り出す前提で撮影を依頼すると、他の媒体の素材も同時に手に入ります。

X

Xは、時間で価値が変わる連絡に向きます。開催の告知、運行の状況、混雑の具合が当てはまります。20代の利用率は73.4%、全年代では44.7%です。

観光の発信では、災害時の扱いを先に決めます。地域に被害が出たとき、観光の投稿だけが流れ続ける状態を避けるためです。止める判断をする人を1名決めておきます。

LINE

LINEで届くのは、すでに登録している人だけです。全年代の利用率は92.9%と5媒体で最も高く、20代では97.7%です。ただし利用率の高さは、新しい人に見つけてもらえることを意味しません。

自治体のLINEは、住民向けの手続きや防災の連絡に使われていることが多い媒体です。観光で使う場合は、登録の入口を分けます。来訪した人に登録してもらい、次の催事の案内を送る形が中心になります。住民向けの連絡と観光の案内が同じアカウントで混ざると、どちらも読まれなくなります。

観光地・自治体のSNS発信の事例

自治体の公式の発信で共通しているのは、目的と担当を先に決めていることです。横浜市・宮崎県小林市・群馬県・大阪府の4件は、いずれも何のために誰が運用するかを公式サイトで公表しています。

事例の読み方

事例は結果ではなく、始めた時点の条件で読みます。確かめるのは次の3つです。

  1. 誰が作ったか:職員か、外部に委託したか。委託なら毎年の費用が要る
  2. 何を目的に置いたか:観光の来訪か、移住か、住民への連絡か。目的が違えば型も違う
  3. 続く形になっているか:1本で終わったか、同じ型で続いているか

この3つがそろわない事例は、数字だけを見ても再現できません。

横浜市の公式Instagram

横浜市の公式Instagramは、目的を「主に海外での横浜の認知度やブランドイメージ向上」と公表しています。アカウント名は「@findyouryokohama_japan」です。発信するのは、横浜の魅力を切り取った写真と動画です。運用は政策経営・国際戦略局のシティプロモーション推進室が担当しています。出典は横浜市のアカウント紹介ページで、2026年9月23日に確認しました。

2021年5月20日の記者発表では、このアカウントのフォロワーが8万人を突破したと公表しました。同じ発表で、過去に撮影した横浜の写真を投稿してもらう企画も案内しています(出典: 横浜市 記者発表資料)。

参考にできるのは、目的の書き方です。「認知度の向上」だけでなく「主に海外での」と相手を限っています。相手が決まっていると、投稿の言語と季節の選び方も決まります。

宮崎県小林市のPRムービー

小林市は、移住促進のPRムービー「ンダモシタン小林」を公式YouTubeで公開しています。長年小林市に住むフランス人が市内を巡る内容で、紹介するテーマは「森」「水」「星」「食」「人」の5つです。企画と制作は外部に委託しています。このムービーは第1弾です。同じ年度内に、あと3本を制作する予定と記載されています。出典は小林市のPRムービーの案内ページで、2026年9月23日に確認しました。

参考にできるのは、テーマを5つに決めて1本目を作り、続きを同じ枠で出す形です。テーマが決まっていると、2本目以降の企画に時間がかかりません。目的が移住である点は、観光の来訪とは分けて読みます。

群馬県の庁内スタジオ

群馬県は、県庁32階に動画・放送スタジオ「tsulunos」を置いています。2020年4月24日に開設され、県職員が企画・撮影・編集を行うと公表しています。広さは60平方メートルです。出典は群馬県のtsulunosの案内ページで、2026年9月23日に確認しました。

YouTubeチャンネルの運用方針も公表しています。運用するのは知事戦略部メディアプロモーション課で、投稿するのはスタジオで作った動画と広報の動画です。コメントには返信しないことも書かれています。不適切と判断したコメントは、削除する場合があるとしています。出典は群馬県のYouTubeチャンネル運用方針です。

参考にできるのは2つです。撮影と編集を庁内に置くと、外に出す本数を減らせます。もう1つは、コメントへの対応を先に決めて公表していることです。線引きが公開されていると、担当者が個別に判断しなくて済みます。

大阪府のアカウント一覧

大阪府は、府が管理するSNSアカウントを7種類の媒体に分けて公開しています。X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、LINE、YouTube、ブログ、その他SNSの7つです。出典は大阪府のSNS等アカウント一覧で、2026年9月23日に確認しました。

参考にできるのは、一覧を外から見える場所に置いていることです。自治体のアカウントは部署ごとに増えます。どれが公式かを住民と来訪者が確かめられると、なりすましの判別にも使えます。

事例の共通点

4件に共通するのは、次の3つです。

共通する点 中身
目的を1つに書いている 海外で知ってもらうこと、移住促進、県政情報の発信。並べていない
担当する部署を公表している 課の名前まで出ている。問い合わせ先も同じページにある
続ける形を先に決めている シリーズの本数、撮影の場所、運用方針、アカウントの一覧

4件とも、来訪者数と経済効果は公表していません。公表されている数値はフォロワー数のような発信側の数字にとどまります。自分の団体で報告の数字を決めるときも、来訪の実数まで背負わない置き方が要ります。

FIZが支援した観光プロモーション5件

届く人数の多さは、起用する人数では決まりません。株式会社FIZが支援した観光プロモーション5件のうち、3件は発信者1名の起用で数万回から数十万回の再生に届いています。分けたのは、投稿に乗せた「行く理由」の作り方です。

大玉村のアウトドア観光促進

福島県大玉村のアウトドア観光促進では、起用した発信者は1名です。キャンプを扱う「あちりつキャンプ」で、登録者は13.2万人でした(2024年12月現在)。広告を配信せず、通常の投稿だけで18万回再生に届いています。同じ期間のキャンペーンの応募促進にもつながりました。詳細は大玉村アウトドア観光促進の実績ページにあります。

成立した理由は村の知名度ではなく、発信者の読者が持っていた関心に村の題材を乗せたことです。題材はアウトドア体験とグルメの2軸に絞っています。

北海道の新路線就航

新千歳とシンガポールを結ぶ路線の就航に合わせたプロモーションです。起用は三好さやかさん1名です。フォロワーはInstagram 43.1万人、YouTube 1.25万人でした(2025年4月現在)。3泊4日の旅程を日ごとに分けて投稿し、再生数はInstagramで62.1万回、YouTubeで3.8万回でした。北海道全域への広告運用も併せています。詳細は北海道庁 新路線就航の実績ページにあります。

ここで使えたのは、就航日という動かせない日付です。自分の地域にも、祭り・開業・季節の見ごろ・記念の年があります。日付のあるものから企画を組むと、告知の予定が先に立ちます。

北海道庁のアウトバウンド促進

北海道庁のアウトバウンド促進は、道民が海外へ出かけることを後押しする施策です。向きは逆ですが、考え方は同じです。コンセプトは「HOW TO 海外」で、発信したクリエイターの総再生数は83万回でした。広告は札幌市・函館市・旭川市で運用しています。詳細は北海道庁 アウトバウンド促進の実績ページにあります。

注目してほしいのは、配信先を3市に絞ったことです。相手がいる場所を先に決めると、限られた予算でも同じ人に複数回届きます。

女満別空港エリアプロモーション

公益社団法人北海道観光振興機構の女満別空港エリアプロモーションでは、起用はViviさん1名です。フォロワーは36万人でした(2021年8月現在)。Instagramのリールは3.8万回再生されました。Google Analyticsの分析でも、目標に置いた数字を大きく上回りました。詳細は女満別空港エリアの実績ページにあります。

この案件で扱ったのは、1つの施設ではなく空港を中心としたエリアです。空港から動ける範囲を面で見せると、滞在の日数が伸びます。市町村の境をまたぐ場合は、取り上げる順番の基準を先に決めます。

中央区観光商業まつりのアカウント運用

東京都中央区の観光商業まつりでは、Instagram公式アカウントの運用を担当しました。投稿する画像や動画の制作と、アカウントの分析も行っています。この案件で公開している数値はありません。公的な案件では、公表してよい数値の範囲が発注者との取り決めで決まるためです。詳細は中央区観光商業まつりの実績ページにあります。

催事に紐づける利点は、日程が毎年決まっていることです。前年の素材が翌年の下敷きになり、企画に使う時間が減ります。公表してよい範囲は、委託の段階で決めてください。決めておくと、次の年度に使える数字が手元に残ります。

起用する人数と届く範囲

1名で足りるのは、発信者の読者と来てほしい相手が重なっているときです。大玉村はキャンプ、女満別は旅行と、題材と読者が一致していました。

大人数が要るのは、会期が数週間しかなく、その期間に集中して名前を知ってもらうときです。1名では投稿の本数が足りず、会期の途中で露出が止まります。

旅行の入口側に届ける手もあります。予約アプリのプロモーションを支援した例がkkdayアプリプロモーションの実績ページです。

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自治体のSNS運用にある3つの制約

観光・自治体のSNSには、民間企業にはない制約が3つあります。担当者が数年で代わること、予算が年度で切れること、決める人が1人ではないことです。民間企業向けの運用論は、同じ担当が続き翌月も予算が出る前提で書かれています。この3つを先に設計へ入れます。

2〜3年ごとの担当者の異動

止まる原因は異動ではなく、運用が人に付いていることです。権限・許諾先・投稿の線引き・数字の記録が紙になっていないと、次の担当者はやり直しになります。

あわせて、投稿の型を3つまでに絞ります。次の担当者は、同じ形をなぞるだけで続けられます。運用のメモは1枚にまとめ、課の共有フォルダに置きます。

年度で切れる予算

「3年かけて育てる」計画は、そのままでは予算の形になりません。自治体の予算は、年度をまたいで持ち越せないのが原則だからです。地方自治法第208条は、会計年度を4月1日から翌年3月31日までと定めています。同条第2項は、その年度の支出(歳出)をその年度の収入(歳入)で賄うことを求めています。条文はe-Gov法令検索で確認できます。

割り方は、その年度に何が残るかで決めます。1年目は撮影した素材と投稿の型、2年目は域外から見ている読者、3年目は地名や催事名での検索と来訪です。報告する数字も年度ごとに変わります。

4者の役割分担と承認の流れ

観光の発信には、自治体・観光協会やDMO・地元の事業者・受託者の4者が関わります。誰が何を決めるかを先に割らないと、撮影の直前で止まります。

関わる側 決めること・担うこと
自治体(観光担当課) 予算・公式アカウントの方針・公表してよい内容の判断
観光協会・DMO 現場の情報・事業者への打診・地域内の調整
地元の事業者 撮影の受け入れ・繁忙期の可否・写真に写る人の許諾
受託者(制作会社・代理店) 企画・撮影・編集・配信の設定・数字の集計

地元との調整で起きるのは、公平性の指摘です。特定の店や宿だけが映ると、映らなかった側から問い合わせが来ます。避けるには、取り上げる先を選ぶ基準を先に文書にします。「その季節に営業している」「撮影の受け入れが可能」といった条件で、合う先を順に回します。

投稿が出るまでの日数も実測します。原稿から公開までを5本分記録し、3日を超えるなら季節や天候に合わせた投稿は成立しません。短くする手は3つです。

  1. 年度の初めに投稿計画そのものの承認(決裁)を取る。個別の投稿は事後の報告に切り替えます
  2. 確認に回す投稿を、条件で絞る。固有名詞・金額・日時が入るものだけを回します
  3. 平時と有事で判断する人を分ける。発信を止める人を1名決めておきます

3番目は、災害時に観光の発信が続く事故を防ぎます。

年度をまたぐ運用の進め方

単年度で切れる予算でも、成果は積み上げられます。前の年度の成果が入れ替わるのではなく、下に残ったまま上が足されるためです。1年目に残るのは素材と投稿の型、2年目はそこに足される域外の読者、3年目はその上に乗る地名での検索と来訪です。

年度が切れても「下の段」は残る

年度の中の進め方

年度の中でやることは、報告から逆算すると並びます。時期は自分の団体の予算編成に合わせて読み替えます。

時期 やること 注意する点
予算の要求 その年度に何を残すかを決める 3年ぶんの計画を1年の単位に割る
仕様書づくり 委託する作業の中身として、目的・対象・成果物・権利・公表の範囲を書く 投稿本数だけを書くと、本数が目的になる
委託先の募集と契約 契約の方法と審査の観点を決める 手続きは団体ごとに違う
制作と配信 撮影・投稿・広告の配信を行う 地元の繁忙期を外して撮影日を取る
報告 域外からの閲覧比率と地名での検索数を前後で比べる 国や県が数える観光客数は、年度内に出ない

詰まりやすいのは、契約から制作までの間です。年度の半ばにずれ込むと、撮影できる季節が終わります。見せたい季節から逆算して契約の時期を置きます。要求の締め切り・補正予算の扱い・審査の進め方は団体ごとに違うため、財政担当課と契約担当課に確認します。

自前と委託の分け方

分け方は、体制の大小ではなく作業の中身です。自前で回せるのは、次の3つがそろう場合です。

  • 撮影済みの写真と動画が一定量ある
  • 担当者が毎週2時間を確保できる
  • 投稿の内容を自分の課の判断で決められる

外に出すのが向くのは、撮影・編集・広告の配信の設定です。短い動画の編集は媒体ごとに作り方が違い、兼任の担当者が覚えきるのは難しいためです。外に任せても、地元事業者への打診・撮影場所の許諾・問い合わせへの最初の対応は庁内に残ります。

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委託の前に決める5つ

仕様書を書く前に、次の5つを庁内で決めます。決まっていない項目は提案を比較できません。

  1. 年度末に報告する数字を1つに決める(複数あると、続行と中止を判断できません)
  2. 来てほしい相手を決める(都府県と交通手段まで書く)
  3. 成果物の権利を決める(契約の終了後も素材を使えるかを明記する)
  4. アカウントの権限を決める(管理者を職員に置き、受託者の個人アカウントで作らない)
  5. 公表してよい数値の範囲を決める(再生数・比率・費用のどれを外に出せるか)

次の年度に響くのは、3番目と4番目です。権利が受託者に残ると、翌年度に同じ素材を使えません。管理者が受託者のままだと、委託先が代わった時点で運用を引き継げません。

契約の方法は、地方自治法第234条第1項に枠が定められています。条文が挙げるのは、一般競争入札・指名競争入札・随意契約(入札をせずに相手を決める契約)・せり売りの4つです。全文はe-Gov法令検索で読めます。プロポーザル方式は、企画の提案を比べて委託先を選ぶ方式です。この方式の進め方と、随意契約にできる金額の線引きは団体ごとに違うため、契約担当課に確認します。総額を決めるときは、撮影・編集・広告費・発信者への謝礼を分けて書きます。

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次の担当者に渡す4つ

引き継ぎで渡すのは操作の手順ではなく、判断の基準です。次の4つを1か所にまとめます。

渡すもの 中身 置き場所
投稿の型 3つまでに絞った構成と、文字を載せる位置 見本の投稿を型ごとに1本ずつ残す
素材 写真・動画の原本と、使ってよい期限・許諾の範囲 共有フォルダに撮影日と場所の名前を付けて保存
アカウントの権限 管理者の職員名と、認証を受け取る端末 課の共用端末に紐づけ、個人の端末に置かない
数字の記録 月ごとの域外からの閲覧比率・地名での検索数・投稿ごとの再生数 表計算1枚。伸びた投稿は理由を1行書く

忘れられやすいのが、素材の使える期限です。期限のない素材は、次の担当者が使ってよいか迷います。1本のプロモーション動画からは、短い動画を複数本切り出せます。女満別空港エリアのプロモーションムービーのように、1本の制作を受け取る形の案件でも同じです。切り出す前提の撮り方を依頼すると、翌年度の制作費を抑えられます。

成果の報告に使う数字

報告に使う数字は、再生数ではなく域外からの閲覧比率と、地名での検索数に置きます。自治体や観光協会は予約の受け皿を持たず、来訪の手前で経路が切れるためです。国や都道府県が数える観光客の数は、年度内の判断に間に合いません。

来訪の記録は「手を離れた先」に残る

来訪までの経路は4つに分かれます。動画や投稿で地域を知り、地名や催事名で調べ直し、交通と宿を手配し、最後に国や県の観光客数に数えられます。3番目から先は民間の交通事業者と宿泊事業者の領域で、自治体の側には記録が残りません。4番目の観光客数は集計に時間がかかり、数字が出るのは翌年度になります。だから、手を離れる前の2つで報告の中心になる数字を取ります。

域外からの閲覧比率

分母を全体の閲覧者数、分子を自分の市町村と隣接自治体を除いた閲覧者数に置きます。媒体の分析画面に出る地域の内訳から、その月のぶんを集計します。記録は月ごとに1行でよく、全体の閲覧者数・域外の比率・上位5地域の名前を並べます。いまの比率を起点に、年度内に何ポイント上げるかを決めます。比率が上がらないまま再生数だけが伸びる月は、域内で回っています。

地名や施設名での検索数

地名や施設名での検索は、見た人が自分から調べ直したことを表します。露出と来訪の間の関心を数字にできます。

確かめる場所は2つです。Google Search Consoleでは、地名を含む検索語の表示回数を出します。Googleトレンドでは、催事の名前の推移を年単位で並べます。催事には、その地域にしかない名前を付けてください。

報告の中心に置く数字は、この2つに絞ります。数字が多いほど、続けるか止めるかを決められなくなるためです。保存数とシェア数、再生数と表示回数は補助の数字として見ます。フォロワー数は域内の住民を多く含むため、単独では判断に使いません。

補助の数字は、月に1度まとめて見ます。伸びた投稿と伸びなかった投稿を3本ずつ選び、型のどこが違ったかを1行で書きます。この1行が、翌月の投稿の判断材料になります。

観光客数のデータとの比べ方

来訪の実数は、観光地を訪れた人の数を数えた観光庁の統計(正式には「観光入込客統計」)で確かめます。観光庁は都道府県が同じ数え方で調べるための基準を定めており、調査結果は各都道府県のウェブサイトで公表されています。観光庁による結果の取りまとめは2024年3月公表分までです(出典: 観光庁の統計の案内ページ)。

比べるときは、施策の期間と観光客を数えた期間をそろえ、前年の同じ期間と比べます。期間をそろえないと、季節の差を成果として読んでしまいます。増えた要因をSNSだけに切り分けることもできません。天候・交通の便数・他の広報・近隣の催事が同時に影響するためです。

経済効果の金額(来た人が地域で使ったお金の見積もり)も、前提の置き方で大きく変わります。自分で例を作らないでください。使うときは推計の方法・1人あたりの消費額の出典・対象の範囲・SNS以外の要因の扱いを並べます。書けないなら、金額は出しません。

炎上・権利・情報の更新の注意点

観光・自治体の発信で起きる問題は、投稿を作る段階ではなく、決め事が無い段階で起きます。

炎上・なりすまし・個人情報

平時のうちに3つの役割を決めます。最初に指摘を受ける人、発信を止める人、公表する文面を承認する人です。投稿を消す前に、画面の記録を残してください。

批判的な書き込みには、事実の誤りだけを正し、評価そのものには反論しません。返すかどうかの線引きも、平時に決めて文書にします。

なりすましへの備えは、公式アカウントの一覧を公開することです。どれが公式かを外から確かめられる状態にします。個人情報では、写真の位置情報と、写り込んだ表札・車のナンバー・子どもの顔に注意します。投稿の前に確認する項目を一覧にして、型ごとに決めておきます。

撮影の許諾と写真の権利

許諾は、撮る前に書面で取ります。確かめるのは3点です。写る人の同意、撮影する場所の管理者の許可、使ってよい期間と範囲です。

住民や来訪者が写る場合は、その場で口頭の同意を取り、記録を残します。祭りや催事では、撮影を行う区画と時間を先に掲示する方法もあります。受託者が撮った写真の権利は、契約で自治体に残すかどうかが変わります。仕様書の段階で決めてください。

写真の加工と情報の更新

写真の加工は、実物との差が出ない範囲にとどめます。色を強めた写真は、同じ景色を見られなかった人の不満に変わります。

古い情報も同じです。終わった催事の投稿、閉店した店の紹介、変わった料金や時刻は、検索で先に見つかります。年に1度、固定の投稿とプロフィールを見直す日を決めます。見直した日付を記録しておくと、次の担当者が判断できます。

広告であることの表示

費用や物品を渡して投稿してもらう場合は、広告であることを表示します。広告であることを隠した表示は、景品表示法の規制の対象です。消費者庁は2023年10月1日から施行しています(出典: 消費者庁 ステルスマーケティングに関するQ&A)。

表示の方法は、発信者に任せず依頼の文書に書きます。表示する文言、置く位置、消さずに残す期間の3つを決めます。発信者を招く費用を公費から出す手続きは、契約担当課に確認します。

観光・自治体のSNSマーケティングに関するよくある質問

予算がほとんどありません。何から始められますか

費用をかけずにできることが3つあります。1つ目は、手元の写真と動画の棚卸しです。撮影日・場所・許諾の範囲を一覧にします。2つ目は、プロフィールと固定投稿の整理です。地名・所要時間・季節の見どころを文字で入れます。3つ目は、域外からの閲覧比率を毎月記録することです。

インフルエンサーに来てもらうには何を決めればよいですか

依頼の文書に書く項目は5つです。

  1. 投稿の本数・媒体・期間
  2. 旅費と謝礼の扱い
  3. 撮影できる場所と写る人の許諾
  4. 広告であることの表示
  5. 素材をほかの用途に使ってよい範囲(二次利用)

選ぶときは、フォロワー数より題材の一致を見ます。読者の関心と地域の題材が重なっていないと、再生されても来訪につながりません。

効果が出るまでにどのくらいかかりますか

かかる時間は、施策の型によって変わります。広告の配信は当日から数字が動き、発信者の起用は投稿から数週間で露出が集まります。アカウントの運用は、傾向が見えるまで3〜6か月かかります。

観光協会と自治体でアカウントを分けるべきですか

目的が違うなら分けてください。住民向けの広報は防災・手続き・行事の案内が中心で、読む人は域内です。観光の発信は域外に向けるため、内容も頻度も変わります。ただし運用できる人が1名なら、増やさない判断もあります。

フォロワーは何人いれば来訪につながりますか

人数では決まりません。判断に使うのは、フォロワーのうち域外に住む人の比率です。1万人のうち9割が域内なら、来訪に使える相手は1,000人です。比率は媒体の分析画面で確かめられます。

まとめ

観光・自治体のSNSマーケティングは、届け先を域外の人に決めるところから始め、5つのステップを順に進めます。成果は、域外からの閲覧と、地名での検索で説明してください。いまのアカウントの管理画面で見ている人の地域を1か月ぶん確かめれば、域外にどれだけ届いているかが分かります。

株式会社FIZは、Z世代に届くSNSマーケティング・インフルエンサー施策に強みを持つ会社です。大玉村のアウトドア観光促進では、発信者1名の投稿で18万回再生を得ました。北海道観光振興機構・東京都中央区など、観光と行政の案件を重ねています。相談したい方は、お気軽にご連絡ください。