ダイレクトマーケティング 17 min read

ダイレクトマーケティングとは|手法の選び方

ダイレクトマーケティングとは|手法の選び方

ダイレクトマーケティングとは、特定の相手に直接働きかけ、その反応を測って改善していく手法の総称です。ダイレクトメール、メール配信、テレマーケティング、SNSなどが含まれます。ただし、これらは並列に選べる選択肢ではありません。選べる手法は、自社が相手について何を持っているかで決まります。住所を持っているのか、メールアドレスなのか、あるいは誰が見込み客かも分かっていないのか。ここが違えば、取れる手も費用の出方も変わります。この記事では、まず定義と混同されやすい言葉との違いを整理します。そのうえで、手元にある情報から手法を選ぶ対応を示します。さらに手法ごとの費用の構造と、オフラインとオンラインを組み合わせる考え方をまとめます。読み終える頃には、自社が今どの手法を取れるのかが分かり、次に用意すべきものを決められるようになっているはずです。

ダイレクトマーケティングとは、相手を特定して直接届ける手法

ダイレクトマーケティングは、特定の相手に直接メッセージを届け、その反応を測って次に活かす進め方です。テレビCMや交通広告のように不特定多数へ広く出すのではなく、届ける相手を絞ります。最大の特徴は、誰に届いてどれだけ反応があったかを数えられることです。

定義——不特定多数ではなく、特定の相手に働きかける

ダイレクトマーケティングは、間に流通や媒体を挟まず、相手へ直接働きかける形を指します。届ける先は既存顧客の場合もあれば、まだ取引のない見込み客の場合もあります。

重要なのは「直接」の中身です。ここでいう直接とは、届ける相手を名簿や連絡先として特定できている状態を指します。手元にあるのが住所なのか、メールアドレスなのか、電話番号なのか。この違いがそのまま手法の違いになります。

マスマーケティングとの違いは「誰に届いたかが分かる」こと

マスマーケティングは、テレビ・新聞・交通広告などで不特定多数に同じ内容を届けます。認知を一気に広げられる一方、誰が見たかを個人単位では追えません。

ダイレクトマーケティングは逆です。届ける相手が分かっているため、反応した人・しなかった人を区別できます。この違いは、次の打ち手の作り方に直結します。

マスマーケティング ダイレクトマーケティング
届ける相手 不特定多数 特定できている相手
測れる単位 到達数・視聴率などの総量 個人ごとの反応
改善の仕方 内容を差し替えて再度出す 反応の有無で相手を分けて出し分ける
向いている目的 認知を一気に広げる 反応を取り、関係を続ける

ダイレクトレスポンスマーケティング・One to Oneとの関係

似た言葉が3つあり、混同されがちです。上下関係で整理すると分かりやすくなります。

  • ダイレクトマーケティング——特定の相手に直接届ける進め方の総称。いちばん広い言葉
  • ダイレクトレスポンスマーケティング——そのうち、受け手の反応(申し込み・資料請求・来店)を直接受け取ることを目的にしたもの
  • One to Oneマーケティング——相手ごとに内容を変えて届ける考え方。ダイレクトマーケティングの中で、個別化を強めた形

3つは対立する概念ではありません。ダイレクトマーケティングという大枠の中で、何を重視するかの違いです。

当てはまるもの/当てはまらないもの

言葉の範囲は、具体例で見たほうが早く掴めます。

当てはまる 当てはまらない
顧客名簿へのダイレクトメール 駅の看板広告
会員へのメール配信・LINE配信 テレビCM
既存顧客への電話案内 雑誌の純広告
資料請求者へのフォロー連絡 不特定多数向けのSNS投稿

境目は「相手を特定できているか」です。SNSでも、フォロワー全体への投稿はマス寄りになります。一方、問い合わせをくれた個人へのメッセージはダイレクトマーケティングに入ります。

手法は「相手について何を持っているか」で決まる

手法を一覧で覚えても、自社が何を選ぶかは決まりません。決め手になるのは、いま手元に相手のどの情報があるかです。住所があればダイレクトメール、メールアドレスがあればメール配信、電話番号があればテレマーケティング。取れる手は、持っている情報とほぼ一対一で対応します。

住所を持っている——ダイレクトメール

住所があれば、封書・はがき・カタログなどを直接届けられます。物として手元に残るため、開封後もしばらく保管されることがあります。紙面のサイズや同封物で情報量を調整できるのも特徴です。

一方で、1通ごとに印刷費と郵送費がかかります。この費用構造は他の手法と大きく違うため、後の章で詳しく扱います。

メールアドレス・LINEを持っている——メール配信・メッセージ

メールアドレスやLINEの友だち登録があれば、配信の形で届けられます。配信そのものの費用はほとんどかからず、送る数を増やしても原価はほぼ変わりません。

ただし、届いても開かれない可能性があります。件名や送信タイミングで開封率が動くため、内容を作り込む手間はむしろ増えます。

電話番号を持っている——テレマーケティング

電話番号があれば、直接会話ができます。相手の反応をその場で確かめられ、疑問にもすぐ答えられる点は他の手法にない強みです。

反面、1件あたりに人の時間がかかります。件数を増やすほど人員が必要になり、対応品質のばらつきも起きやすくなります。あらかじめ話す内容と手順を揃えておく準備が要ります。

誰が見込み客かまだ分からない——SNS・広告で接点を作る段階から

ここまでの3つは、相手の連絡先を持っていることが前提でした。持っていない場合、いきなり直接届ける手法は使えません。先に接点を作る段階から始めることになります。

SNSでの発信や広告で関心のある人を集め、資料請求や会員登録で連絡先を受け取る。この流れができて初めて、ダイレクトメールやメール配信の土俵に乗ります。順番を飛ばして名簿を買う方法もありますが、関心のない相手に届けることになり、反応率は下がりがちです。

手元にあるものと取れる手法の対応(早見表)

ここまでを一覧にすると、次のようになります。

取れる手法は「手元にあるもの」で決まる

住所・メールアドレス・電話番号の3つは、どれが上ということはありません。持っているものに応じて選ぶだけです。ただし最後の行だけは性質が違います。ここに当てはまる場合、ダイレクトマーケティングの実行ではなく、その前の準備から始めることになります。

なお、ここで決まるのは取れる手法であって、いくらかかるかは別の話です。同じ表の中でも、ダイレクトメールとメール配信では費用のかかり方がまったく違います。次の章で、その違いを見ていきます。

手法ごとに費用の出方が違う

同じダイレクトマーケティングでも、費用のかかり方は手法で大きく異なります。分かれ目は「1件増やすと原価が増えるかどうか」です。ダイレクトメールは1通ごとに原価が乗り、メールやSNSは配信を増やしても原価がほとんど変わりません。

ダイレクトメール——リスト・印刷・郵送に費用がかかり、1通ごとに原価が乗る

ダイレクトメールの費用は、大きく3つに分かれます。届け先の名簿を用意する費用、紙面を制作して印刷する費用、そして郵送する費用です。

このうち印刷費と郵送費は、送る数に比例して増えます。1,000通を2,000通にすれば、印刷と郵送の費用はおおむね倍になります。制作費は1回作れば使い回せますが、原価の部分は数に連動する。ここがメール配信との決定的な違いです。

そのため、ダイレクトメールでは「誰に送らないか」を決めることが費用に直結します。名簿全件に送るのではなく、反応が見込める層に絞るほうが、同じ予算で結果を出しやすくなります。

メール・SNS——配信の原価はほぼゼロだが、制作と運用に人手がかかる

メール配信やSNSでは、送る数を増やしても配信そのものの原価はほとんど増えません。費用の中心は、配信ツールの利用料と、内容を作って運用する人手です。

安く見えますが、手間が消えるわけではありません。開封されなければ届いていないのと同じなので、件名・配信時間・内容を試して直す作業が続きます。1回作って終わりにできない点は、むしろダイレクトメールより負荷が高いこともあります。

反応をどう測るか(到達・反応・成約の3段階)

費用対効果を判断するには、反応を3つの段階に分けて数えます。段階を分けずに「効果があったか」だけを見ると、どこを直せばよいか分かりません。

反応は「3段階」に分けて数える

  1. 到達——届いたかどうか(郵便なら発送数、メールなら到達数)
  2. 反応——受け取った人が動いたか(開封・クリック・電話・来店)
  3. 成約——申し込みや購入に至ったか

3段階に分けると、問題の在り処が見えます。到達はしているのに反応がないなら、内容か届けるタイミングの問題です。反応はあるのに成約が出ないなら、その先の受け皿に原因があります。

紙のダイレクトメールでは、反応をどう数えるかを先に決めておく必要があります。専用の電話番号やQRコード、クーポン番号を刷り込んでおかないと、後から測れません。

少額から試すときの考え方

はじめから全件に配るのは避けるのが無難です。名簿の一部に送り、反応を見てから範囲を広げる進め方が現実的です。

小さく試すときは、変える要素を1つに絞ります。紙面を2種類作って同じ層に送れば、どちらの紙面が良かったかが分かります。紙面も送る層も同時に変えると、何が効いたのか判断できません。

オフラインとオンラインを1つの設計にまとめる

ここまでは、手元にあるもので取れる手法を1つ決める話でした。ここからは、その先の話です。ダイレクトメールとSNSは役割が違うため、組み合わせたほうが噛み合います。手元に届く物で関心を作り、その後の接点をオンラインで続ける。この設計ができると、1回きりで終わらない流れになります。

紙とデジタルは競合しない——役割が違う

紙のダイレクトメールは、届いた瞬間の存在感が強く、机の上に残ります。一方で、そこから先の反応を続けて追いかけるには向きません。

オンラインは逆です。単体では埋もれやすいものの、反応した人を追いかけ、続けて接点を持つことができます。強みが逆方向なので、片方を捨てる理由がありません。

手元に届く物の強さと、その後の接点をSNSでつなぐ

組み合わせるときの基本形は、紙で関心を作り、オンラインで受け止める流れです。ダイレクトメールにQRコードを刷り込み、読み取った先をSNSアカウントや申し込みページにしておきます。

こうしておくと、紙を受け取った人がオンライン側の接点に移ります。以降は反応を追いかけられるようになり、次の案内も届けられます。紙の一度きりの接触を、続く関係に変えるための橋渡しです。

実際にDMを設計・制作してきた立場から見た注意点

株式会社FIZは、デジタル広告によるダイレクトマーケティングの設計・実行を手がけてきました。日本タクシーの採用DMDMMキャリアグリップのSNSダイレクトマーケティングが例です。販促チャネルの構築では、トーカ堂の新販促チャネル構築支援も手がけています。

実務で見落とされやすいのは、制作より前の工程です。名簿の住所が古いままだと、印刷も郵送も無駄になります。発送前に宛先の状態を確認する手間は、後から取り返せません。

もう1つは、刷ってしまうと直せないことです。オンラインなら配信後に文面を差し替えられますが、紙は届いた時点で確定します。誤記や連絡先の間違いは刷る前に潰しておく必要があります。

施策をまたぐときに揃えるもの(訴求・見た目・遷移先)

紙とオンラインをまたぐときは、3つを揃えておきます。ずれていると、受け取った人が同じ案内だと気づけません。

  • 訴求——伝える中身を同じにする。紙とオンラインで違う話をしない
  • 見た目——色・書体・写真の雰囲気を合わせ、同じ発信元だと分かるようにする
  • 遷移先——紙から誘導する先と、オンラインで案内する先を一致させる

特に遷移先は分かれやすい部分です。紙のQRコードはトップページ、広告は申し込みページ、という状態になっていないか確認してください。

何から始めるか——3つの手順

最初にやることは、手法を選ぶことではありません。手元に何があるかを確かめ、測る指標を決め、小さく試す。この3手順の順番を守ると、無駄な費用を使わずに済みます。

手法を選ぶ前に「この順番」で進める

① いま持っている顧客情報を棚卸しする

まず、自社が相手について何を持っているかを確認します。住所、メールアドレス、電話番号、それぞれ何件あるか。そして、その情報がいつ取得されたものかも見ます。

ここで取れる手法が決まります。何も持っていないと分かった場合、それも収穫です。接点を作る段階から始めるという方針が定まります。

② 測る指標を先に決める

始める前に、何を数えるかを決めます。到達・反応・成約の3段階のうち、今回の施策で追うのはどれかをはっきりさせておきます。

先に決めておかないと、終わった後に「なんとなく反応が薄かった」で終わります。紙の施策では特に重要で、測る仕掛けは刷る前に組み込む必要があります。

③ 小さく試して反応を見てから広げる

いきなり全件に配らず、一部に送って反応を見ます。反応が想定より低ければ、範囲を広げる前に内容を見直せます。

試す規模は、反応の差が読み取れる程度あれば十分です。何件必要かは反応率の見込みで変わるため、最初は「全体の一部」と割り切って始めるほうが動き出しやすくなります。

ダイレクトマーケティングに関するよくある質問

実行の前によく出てくる疑問を4つ挙げます。いずれも「規模」や「手法の新旧」ではなく、相手の連絡先を持っているかどうかが答えを分けます。

中小企業でも実行できますか

実行できます。ダイレクトマーケティングは規模ではなく、相手の連絡先を持っているかどうかで成立します。既存顧客が数十件でも、その相手に直接届ける施策は組めます。

むしろ件数が少ないほうが、1件ずつ内容を変える余地があります。大量配信ができないことは、必ずしも不利ではありません。

ダイレクトメールは今も効果がありますか

手元に物が届く形式には、オンラインにない強みが残っています。メールの受信箱と比べ、郵便物は目に入りやすい状況にあります。

ただし「紙だから効く」わけではありません。届ける相手を絞れているか、反応を測る仕掛けがあるかで結果は変わります。名簿全件に一律で送る使い方では、費用ばかりかかります。

顧客リストがない場合はどうすればよいですか

先に連絡先を受け取る仕組みを作ります。SNSでの発信や広告で関心のある人を集め、資料請求・会員登録・問い合わせなどで連絡先をもらう流れです。詳しい進め方はSNSマーケティングの手法の選び方も参考になります。

第三者の発信力を借りて接点を広げる方法もあります。インフルエンサーを活用した施策は、認知が薄い段階で関心層に届けるときの選択肢になります。

個人情報の扱いで気をつけることは何ですか

大きく2つあります。連絡先を集めるときの利用目的と、広告メールを送るときの同意です。

個人情報保護法では、個人情報を取得した場合の扱いが定められています。あらかじめ利用目的を公表しているときを除き、速やかに本人へ通知するか公表することが求められます(第21条第1項)。個人情報保護委員会は、この「公表」の例としてホームページへの掲載などを挙げています。

広告・宣伝を目的としたメールは、特定電子メール法の対象です。総務省と消費者庁の資料によると、原則としてあらかじめ送信に同意した相手にしか送れません(オプトイン方式)。送信時には、送信者の氏名または名称と、配信停止を受け付けるメールアドレスなどの表示が必要です。同意を得た記録の保存も求められます。配信停止の通知を受けた後は、その相手に送ることはできません。

自社のケースが該当するかは、個人情報保護委員会のQ&A総務省の解説資料で確認できます。そのうえで、実施前に自社の法務や専門家へ相談してください。

まとめ:手元にある情報から、取れる手法を選ぶ

ダイレクトマーケティングは、手法を覚える話ではありません。いま自社が何を持っているかで、取れる手はほぼ決まります。

  • ダイレクトマーケティングは、特定の相手に直接届け、反応を測って改善する手法の総称
  • 住所ならダイレクトメール、メールアドレスならメール配信、電話番号ならテレマーケティングと対応する
  • 連絡先を何も持っていない場合は、接点を作って連絡先を受け取る段階から始める
  • 費用の分かれ目は「1件増やすと原価が増えるか」。ダイレクトメールは増え、メール・SNSはほぼ増えない
  • 反応は到達・反応・成約の3段階で数えると、直すべき箇所が分かる
  • 紙とオンラインは役割が違うため、組み合わせて1つの設計にまとめる

まずは、自社が顧客の連絡先を何件・どの形で持っているかを書き出すところから始めてみてください。そこが決まれば、次に用意するものは自然に決まります。

株式会社FIZは、Z世代に届くSNSマーケティング・インフルエンサー施策に強みを持つ会社です。デジタル広告によるダイレクトマーケティングの設計・実行と、SNSを組み合わせた設計を手がけています。広告とSNSを組み合わせた施策を検討されている場合は、お問い合わせページからご相談ください。